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Love&Love英語でメキメキ上達!!
 

◆宇都出 雅巳氏の”英語楽読法”から

 宇都出/雅巳さんは1967年京都府生まれ、東京大学経済学部卒業後、経済出版社、コンサルティング会社を経て、ニューヨーク大学スターンスクールに留学、MBAを取得しました。

 帰国後、外資系銀行に勤務した後、2002年に独立し、高確率セールス公認トレーナーのほか、コーチ養成機関・CTIジャパンリーダー、オールアバウト「コーチングマネジメント」ガイドを務めました。

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 いますぐわかりたい気持ちを脇におきます。

 英語を勉強ととらえるのではなく、実際に読みたい原書を読むことで実践的に英語力向上をめざす方法を述べています。

 原書の例としては、

 スタンフォードの自分を変える教室

 The Willpower Instinct

を使っています。

 トップダウン・スパイラル法を提唱しています。

 トップダウンとは、一言でいうと本の全体から部分の理解に進んでいくことです。

 スパイラルとは、何度も繰り返し読んでいくことです。

 その組み合わせですので、まずは短時間で英書の全体を読んで理解し、それを速く繰り返していく読み方です。

 単語といった部分からではなく、文章全体の意味から理解します。

 1回の読解に時間をかけず、わかるところからすばやく何度も読んでいきます。

 日本語の書物でも難しい速読を、洋書で行うのは並大抵ではできないように感じます。

 しかし、英語の読解力を上げていく一番のコツは、易しい英文を繰り返し大量に読むことです。

 これがわかっていると、トップダウン・スパイラル法という読書術は理にかなっていることが理解できます。

 英文を読む敷居を下げ、結果的に英文を読む量が増えるように思われす。

 読む原書の内容も簡単なものではなく、興味のある実践的な本を読むように薦めています。

 やさしい本は読み続かないと説明されています。

 やさしい本はコンテンツがなく、英語自体は読みやすいものの、現実的には読み続けられないのだそうです。

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 あなたは英語の勉強が好きですか、という質問に、大好きです、とすぐに答えるほどの人であれば、この本はあまりお役に立かないかもしれませんとのこと。

 英語は嫌いではないですが、英語の勉強は苦手です

とか、

 英語は嫌いです。でも話せるように、読めるようになりたい

という人であれば、きっとこの本はお役に立つでしょう。

 宇都出さん自身は、じつは英語好きではないそうです。

 英文科や英語学科などを卒業していませんし、英語を教えたこともありません。

 英語の勉強が長続きしたためしがなかったそうです。

 英語好きでもないのに、アメリカに留学したり、TOEICで990点を取りました。

 英語嫌いでも、英語を使うことは楽しいからだそうです。

 洋書を読んだり、アメリ力人の友人とメールをやり取りしたり、インターネットの動画サイトを見たりするのは大好きとのこと。

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 英語を勉強することよりも、英語を使うことはその何倍、何十倍も楽しいのです。

 たとえば、何かの楽器の基本練習は嫌いでも、好きな曲を演奏するのは楽しいでしょう。

 素振りやリフティングの練習は嫌いでも、野球やサッカーをすることは楽しいという人は多いはずです。

 それは、英語も同じです。

 しかし、英語は高校入試や大学入試の影響か、勉強ばかりがクローズアップされ、使う楽しさを多くの人が知りません。

 英語をがんばって勉強するより、楽しみながら使うほうが結果的に英語は上達します。

 英語を使うということのなかでも、最も簡単なのは読むことです。

 多くの人に、英語を使う楽しさを知り英語を使えるようになっていただきたいと思います。

 洋書を読むなんて、と尻込みする人がいるかもしれませんが、恐れることはありません。

 わかるところからだんだんと読み進めていく、トップダウン・スパイラル法を活用します。

 これまで学校の授業の影響などで身についた、返り読みのムダと日本語にするムダを省いていきます。

 そうすることで、簡単に英語が読めるようになります。

 ・・・・・・

 インターネットの力もあり、日本にいながらも大量の英語に触れられるようになりました。

 ようやく、だれでも英語を使うことができる環境が整ったのです。

 宇都出さんは、いま必要なのはこれまでの”英語=勉強”から”英語=使う”へのパラダイム・シフトだと言われます。

 そのため、いますぐ英語の勉強をやめようと提案されています。

 勉強しているから英語ができない、のだとのことです。

 宇都出さんが翻訳や通訳の仕事をしていると言うと、”どうやったら英語ができるようになるんですか”とよく訊かれ、宇都出さんは、

”英語の勉強をしないことですね”

”いま、英語の勉強をされているなら、それをすぐにやめることです”

と応えておられるそうです。

 こう言うと、たいていの人が首を傾げます。

 英語の勉強をしないで、どうやったら英語ができるようになるのでしょうか。

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 反応はさまざまのようです。

 宇都出さんは、何もしないで英語ができるようになるとは言っておられません。

 これまでのような勉強をやめるかわりに、使うことをすすめておられるのです。

 英語ができるようになるには、英語をたくさん使うことが必要不可欠です。

 そのためには、英語の勉強をやめることが大事なのです。

 勉強ではない方法で英語を使うなんて、想像できないかもしれません。

 ほとんどの日本人にとって、英語は勉強する対象でした。

 英語圏の国で生活していたという人以外で、もっとも英語に触れたのは中学や高校などの授業科目の一つとしてだと思います。

 つまり、英語は勉強の対象だったのです。

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 宇都出さんは、いま必要なのはこれまでの”英語=勉強”から”英語=使う”へのパラダイム・シフトだと言われます。

 宇都出さんの英語暗黒時代も、勉強が原因だったそうです。

 英語は勉強の対象、あるいは授業科目にすぎないのでしょうか?

 もちろん違います。

 英語は、単に勉強するものではありません。

 それを使ってコミュニケーションしたり、新聞や本を読んだりするための手段です。

 もちろん、大学の英文科に行くような人、英語そのものが大好きで学んでいる人や、英語の先生のように、それ自体を仕事としている人もいます。

 しかし、大多数の人にとっては、英語とは何かしたいことをおこなうための手段にすぎません。

 そんな人が勉強として英語そのものに取り組んでも、退屈で長続きしません。

 もちろん、できるようにもなりません。

 それよりも手段として英語を使うようにすることが、英語ができるようになるためには必要なのです。

 ・・・・・・

 将来、手段として使いたいからこそいま勉強している、と反論される人もいるでしょう。

 たしかに、勉強は必要です。

 まったく勉強していない言語を、いきなり使えと言われてもできません。

 しかし、英語に関して使うための勉強はもう十分しています。

 ほとんどの人たちは、中学と高校で、英語の基礎的な部分は習ったと思います。

 まずは、これを使うことです。

 そうすることで初めて、何を勉強したらいいかが具体的に見えてきます。

 逆に、勉強しなければとがんばることが、使うことの邪魔になり英語の上達を妨げているのです。

 もし、あなたが日々英語を使っていて、そのなかで具体的に勉強すべきポイントを絞って勉強するのであれば問題ありません。

 それは、使うための勉強だからです。

 しかし、あなたが日々の生活やビジネスで英語を使うことはほとんどなく、ただ単に英語を勉強しているのであれば、それは単なる勉強のための勉強です。

 このような場合、宇都出さんは、すぐに英語の勉強をやめるべきだと言われます。

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 宇都出さんも、かつては、英語は勉強すればできるようになるものだと思い込んでいたそうです。

 そのため、振り返れば、20代は英語暗黒時代だったそうです。

 英語ができるようになりたいという思いから、いろいろな英語勉強本や英語教材に手を出しました。

 どれも長続きせず、結局は挫折を繰り返していました。

 使うことを伴わない勉強は、ほとんどの場合、遅かれ早かれ行き詰まることが目に見えています。

 そして、そのがんばりの割には英語に触れる時間は増えず、できるようになりません。

 勉強という意識では、勉強しているとき以外の時間に英語に触れることはまずないからです。

 英語ができるようになるためには、英語をもっと勉強することではなく、英語を使うことへの方向転換が必要なのです。

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 宇都出さんは、いまでは英語に抵抗感がなくなり、自由に英語を読み、書き、聞き、話せるようになっているそうです。

 また、洋書や英文マニュアルの翻訳やセミナー通訳までするようになったとのことです。

 これは、30歳のころ英語の勉強をやめて、英語を手段として使うようになったことが大きな転換でした。

 当時宇都出さんは、営業コンサルタントとして、クライアントのターゲット顧客の選定や営業プロセスの見直しをサポートしていました。

 ちょうどそのころ、パソコンとネットワーク技術の発達のなかで登場した、営業支援システムの導人もおこなっていました。

 パソコンやネットワーク技術の急速な進歩は、仕事のやり方そのものにも大きな変化をもたらしました。

 営業の分野では、セールスとマーケティングを、顧客データベースを中心に統合しようとする新たなコンセプトがアメリカで生まれていました。

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 宇都出さんは、いま必要なのはこれまでの”英語=勉強”から”英語=使う”へのパラダイム・シフトだと言われます。

 では、具体的にどのように英語を使うのがいいのでしょうか。

 ひと昔前は、

 外国人の恋人をつくれ!

とか、

 海外の人とペンフレンドになれ!

などが英語を使う場合の代表的なものでした。

 コミュニケーション好きな人はさておき、日本人にとってはかなり敷居の高いものでした。

 しかしいまでは、インターネットをはじめ多くの英語情報が手に入れられるようになり、かなり敷居が低くなっています。

 たとえば

・テレビでCNNニュースなどの英語ニュースを観る

・英文で日記を書く

・英文でTwitterを読む

・動画サイトで英語のプレゼンテーションを観る

・好きな洋画や海外ドラマをDVDで借りて観る

・毎日、英字新聞を読む

・毎週“TIME"や“Newsweek"などの英文雑誌を読む

などです。

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 パソコンやネットワーク技術の急速な進歩で、セールスとマーケティングを顧客データベースを中心に統合する、新たなコンセプトがアメリカで生まれました。

 そういった新たなコンセプトは、翻訳書の形で日本にもどんどん紹介されました。

 宇都出さんは、当時、マーケティングについてほとんど無らなかったため、学ぶ必要性を感じて翻訳書を片っ端から読んだそうです。

 しかし、翻訳書は原書に比べてどうしても読むタイミングが遅くなります。

 そこで、だんだんと洋書にも手を出すようになっていきました。

 最初はおっかなびっくりでしたが、とにかく知りたかったので読むようになっていったそうです。

 これが、英語が勉強の対象ではなく手段となった転換点でした。

 洋書を読むなかで、日本では翻訳書が出ていないものにも触れていき、どんどんマーケティングに対する好奇心が高まっていきました。

 そして、いっそのこと本場に行って直接学ぶのが早いだろうと、ニューヨークのビジネススクールに思い切って留学しました。

 20代をずっと勉強していたため、その観点からは考えられない決断だったとのことです。

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 宇都出さんは、当時、なんとかTOEFLやGMATなどといった入学のための試験はパスしていたそうです。

 留学してみれば、授業はほとんど聞き取れず、毎日のように膨大なテキストや資料を読む宿題が課せられます。

 とはいえ、英語ができません、なんて言っていられません。

 英語自体を勉強するなんていう余裕はまったくありませんから、ただひたすら洋書を読み、授業についていったそうです。

 とにかく、英語を使うことに専念せざるを得ませんでした。

 そのため英語に触れる時間は、勉強していたときよりも桁違いに増えました。

 そうしていくなかで、留学した当初はほとんど聞き取れなかった授業も、だんだんと聞けるようになっていきました。

 分厚い洋書でも、楽に読めるようになったのです。

 宇都出さんは、留学前は英語の勉強が長続きしなかった自分には、想像もできなかったことだった、と言われます。

 ・・・・・・

 宇都出さんは、留学してただ語学留学で勉強するだけなら、自分は英語好きでないためどこかで挫折していたでしょう、と言われます。

 海外留学しても、必ず英語を使うとは限りません。

 マーケティングという、自分の学びたいものを学ぶ手段として英語が必要だったのです。

 海外留学しても、大事なのは使うということです。

 だからこそ、英語に触れ続けることが可能となり、その結果、英語ができるようになっていったのです。

 海外留学したのに英語はほとんど上達しなかった、人は結構います。

 実は、たとえ海外で暮らしても、ほとんど英語を使わずに生活できてしまうのです。

 買い物にしても、食事をするにしても、簡単なフレーズをいくつか覚えておけば、ほとんど言葉を使わないでもなんとか用は足せるものです。

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 宇都出さんは、留学してただ語学留学で勉強するだけなら、自分は英語好きでないためどこかで挫折していたでしょう、と言われます。

 日本人が周りにいれば、ついつい日本人とばかり付き合ってしまいます。

 日本語への恋しさも手伝って、会話もほとんど日本語になります。

 もちろん、留学であれば学校で英語に触れることにはなります。

 ですが、そこで手を抜いて、適当に授業を受けるだけであれば、日本で英語の勉強をしているのとほとんど変わりません。

 そうして、気づけば英語をあまり使うことなく、留学期間を終えてしまうのです。

 いわゆる゛日常会話はしゃべれようになるでしょうが、それ以上にはなりません。

 ここでいう日常会話とは、子どもが自分の要望を伝えるレベル、挨拶を交わすレベルといったものです。

 それでは、一般的な海外旅行者と同じです。

 まだ、英語ができているうちに入りません。

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 宇都出さんは、翻訳して本を出されています。

『売り込まなくても売れる! 実践編』(フォレスト出版)

『コーチング・バイブル 第3版』(東洋経済新報社 共訳)

などです。

 英語嫌いなのに翻訳までできるようになったのは、英語を勉強したからではなく、とにかく使ったからだとのことです

 逆に言えば、海外留学せず日本にいても、したいことをするための手段として英語を使うようになりさえすれば、英語はできるようになるということです。

 たとえ英語好きでなくても、英語にたくさん触れるようになり、結果的に英語は上達します。

 宇都出さんは、留学先から帰国後、英語を積極的に使うことで、さらに英語ができるようになったそうです。

 帰国後に出会った

「高確率セールス」という営業手法、

「コーアクテイブ・コーチング」というコミュニケーション手法

に魅せられたそうです。

 どちらもアメリカで生まれたものでしたが、これらを日本に紹介する仕事にかかわるなかで、英語をどんどん使ったのでした。

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 宇都出さんは、帰国後に出会った営業手法やコミュニケーション手法に魅せられたそうです。

 どちらもアメリカで生まれの手法ですが、日本に紹介する仕事にかかわるなかで英語を使いました。

 具体的には、その内容を深く知るために英文マニュアルや原書を読みました。

 また、英語の音声教材を聞いたりしました。

 ただ読みたい、聞きたいから、英語を使ったわけです。

 勉強だけのためであったら、それだけの英語に触れるなんてできなかったでしょう。

 勉強したからではなく、使つたからこそ数多くの英語に触れ、さらに英語ができるようになったのです。

 しかし、実際には、日本人は使うことなく勉強し続けていると考えられます。

 しかも、もっとも使うことのない英語を勉強しています。

 それはズバリ、英会話です。

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 宇都出さんは、まずは英会話という思考が、英語がなかなか上達しない大きな原因だと言われます。

 一般的に、まずは英会話と、英会話の勉強本やテレビ・ラジオ講座、さらには駅前の英会話教室に通う場合が少なくありません。

 でも、英語はなかなか上達しません。

 なぜなら、大半の日本人には、英会話を実際に使う機会がほとんどないからです。

 以前、元マイクロソフト日本法人社長の成毛 眞さんが、

”日本人の9割に英語はいらない”

という本を出して話題になりました。

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 成毛 眞さんは1955年生まれ、メーカーや出版社勤務を経て日本マイクロソフトの設立に参画し、1991年に代表取締役社長に就任し、2000年に退社後、投資コンサルティング会社・インスパイアを設立しました。

 本の趣旨は、9割の人はもっと本を読め、1割はもっと英語ができるようになれ、ということのようです。

 英語を勉強しなければいけないという強迫観念にとらわれている人は、無批判に欧米人の考えを受け入れ、英語業界のカモの予備軍になりかけているということのようです。

 いま日本人に必要なのは、日本という母国を深く知り、自分なりの考えをしっかりと持ち、日本語でしっかりと伝えられる日本人力だということです。

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 英語がいらないかどうかはさておき、9割の日本人に英会話がいらないのは、まぎれもない事実ではないでしょうか。

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 宇都出さんは、たいていの人はおそらく、日常生活で英会話をする機会はほとんどないのでは、と言われます。

 外資系企業に勤めていて、社内公用語が英語であるとか、上司や顧客が外国人ばかりとか、そういう環境であれば別です。

 多くの日本人はそういった環境にありません。

 いくら毎週のように英会話スクールに通っても、英会話講座で勉強しても、実生活で使うことがないと、実際に英語に触れる時間はわずかです。

 これではどんどん忘れて身につきません。

 なんとか忘れないで身につけようとして、勉強時間を増やしてがんばっても焼け石に水です。

 このため、多くの人は英会話の勉強に挫折し、いつまでたっても英語ができるようにならないのです。

 もし、あなたが英会話をしたいという夢があるのであれば、いますぐ英会話を使う機会を探して使うことです。

 あるいは、英会話以外の手段で英語を使う機会を探すことです。

 それが遠回りに見えて、じつは近道です。

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 宇都出さんは、英語は実践するからできるようになるのだ、と言われます。

 英語ができるようになりたければ英語の勉強はいますぐやめなさい、というのは実践との関係があったからです。

 最初びっくりされた人も、ここまでくれば勉強をやめることの大事さに納得されたことでしょう。

 宇都出さんは、そもそも、学校での英語の位置づけに大きなボタンのかけ違いがあったのではないかと言われます。

 英語は、国語や数学などと同じカテゴリーではなく、体育や美術などの実技科目と並べるべきものなのです。

 たとえば体育の授業で、教室のなかで1年中、体育理論の勉強ばかりしてもダメです。

 バレーボールやソフトボールなどのルールや戦術を細かく勉強しても、身体能力は一向に上がらず、スポーツもできるようになりません。

 ある程度の理論学習やルールの勉強は必要かもしれませんが、必ず実技として、実際に身体を動かしたり、競技に取り組んだりして、スポーツをおこなうものです。

 英語も同じです。

 いつまでも机に向かって理論学習や文法ルールの勉強をしていても、できるようになりません。

 それを実際に使う、実技の時間が必要なのです。

 ・・・・・・

 宇都出さんは、英語もそれを実際に使う実技の時間が必要だと言われます。

 スポーツは、身体を動かす練習だけをしていればいいというわけではありません。

 実際の試合をおこなって、それなりに経験を積むことで上達するのです。

 本来であれば、英語も、体育や音楽のように学校でも実技演習に時間を割くべきでしょう。

 中学、高校、さらには大学で勉強をしたあとであれば、もう勉強時間は十分です。

 実技練習は、実際の試合をおこなうように英語を使うことが必要です。

 使うなかで必要とわかった点について、また練習したり、勉強したりすればいいのです。

 勉強するのはやめて、練習しましょう。

 そして、試合に出ましょう。

 英語ができるようになるために必要なのは、改めて勉強し直すことではなく、どんな形であれ使うことです。

 ・・・・・・

 宇都出さんは、英語を使うには読むのか一番だと言われます。

 英語を勉強するのではなく、実際に英語を使うことが重要です。

 日常生活のなかでどのように英語を使ったらよいのでしょうか。

 ひと昔前は、

”外国人の恋人をつくれ!”

とか、

”海外の人とペンフレンドになれ!”

などと言われました。

 コミュニケーション好きな人はさておき、日本人にとってはかなり敷居の高いものだったでしょう。

 いまは、インターネットをはじめ、多くの英語情報が手に入れられるようになって、かなり敷居が低くなっています。

たとえば

・テレビでCNNニュースなどの英語ニュースを観る

・英文で日記を書く

・英文でTwitterを読む、書く

・動画サイトで英語のプレゼンテーションを観る

・好きな洋画や海外ドラマをDVDで借りて観る

・毎日、英字新聞を読む

・毎週TIMEやNewsweekなどの英文雑誌を読む

などがあげられます。

 そのほかにも、いろいろと英語を使う例が考えられるでしょう。

 ・・・・・・

 もしあなたが実際に日常生活のなかで楽に継続できるのであれば、なんでも構いません。

 大事なことは、英語を勉強するためではなく、あなたがそれ自体をやりたいと思っていることです。

 そうでないと、短い期間ならともかく、決して継続できません。

 そして、もう一つ考えてもらいたい点があります。

 それは、英語を読むのか、書くのか、聞くのか、それとも話すのか、ということです。

 これもやりたいようにと言いたいところですが、じつはそうはいきません。

 なぜなら、読む・書く・聞く・話すでは、敷居の高さ、難易度に違いがあるからです。

 このなかで、敷居の低いもの、そして簡単なものはなんだと思いますか?

 「読めない」と

 「聞けない」「話せない」「書けない」

のです。

 したがって、答えは「読む」ことです。

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 「読めない」と、「聞けない」「話せない」「書けない」のです。

たとえば、洋画や海外ドラマのDVDを観るとき、そこに出てくる英語の字幕を読めないのに、音声を聞き取って理解できるでしょうか?

 また、人前でスピーチするとき、スピーチする内容を書いたメモを読めないのに、それを話せるでしょうか?

 さらに、ある英文を読むことができないのに、その英文を書けるなんてことは、もちろんあり得ません。

・読めないと聞けない

・読めないと話せない

・読めないと書けない

 このように「読む」ことがほかの「聞く」「話す」「書く」すべての前提条件なのです。

 英語を使うには、読めるようにならないと、話したり、聞いたり、書いた
りすることは望めないのです。

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 でも、読むことは学校の勉強でさんざんやってきたはずではないでしょうか。

 ただ、学校の勉強では読むことが中心でしたが、実際にテキストをとおして読んだ分量はそんなに多くないはずです。

 学校によって差はありますが、中学と高校のテキストをすべて合わせたところで、おそらくペーパーバック10冊分にもなりません。

 そんななかで、いくら話したり、書いたり、アウトプットしようとしても、出てくる英語は貧弱な内容にしかならないのです。

 これから、英語を読む量をもっと多くすることが必要です。

 また、「聞く」「話す」「書く」の中で、読むことがもっとも簡単で、実践するための敷居がもっとも低くなっています。

 たとえば、「話す」ことと比べてみましょう。

 英語の上達のためには積極性や恥を恐れないことが大事だとよく言われます。

 たしかに、どんどんネイティブの人に話しかけて、ときには恥をかいても会話の経験を増やして慣れることで、徐々に英語はできるようになるでしょう。

 ですが現実的に考えれば、ほとんどの日本人にとって、これは実践できないことです。

 通じなかったらどうしよう、笑われたら恥ずかしい、そもそも、どう話しかけたらいいの、といった気持ちが、二の足を踏ませてしまいます。

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 「聞く」「話す」「書く」の中で、読むことがもっとも簡単で、実践するための敷居がもっとも低くなっています。

 では「聞く」ことはどうでしょう。

 ラジオやテレビ、映画などが相手であれば、恥の部分は気になりません。

 しかし、コントロールがきかないのが難点です。

 こちらがわからないと思っているあいだに、テレビや映画はどんどん先に進みます。

 もちろん、CDやDVD、ビデオであれば、停止して、巻き戻せばいいわけですが、読むことに比べれば面倒です。

 また、本などは手元にあればすぐに読み始めることができますが、聞くためには何らかの機械が必要です。

 「すぐにスタート!」というわけにはいきません。

 最後に「書く」ことです。

 読むのと書くのとでは、どちらの敷居が低いでしょうか。

 やはり読むことです。

 本を読む人は多くても、書く人は圧倒的に少ないのが現状です。

 そして、どんなに書き慣れている人でも、読むより書くほうが速いという人はいないでしょう。

 やはり「読む」ことがもっとも敷居が低く、実践しやすいのです。

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 宇都出さんは、英語を使うには読むのか一番だと言われますが、何を読むのがいいのでしょうか。

 宇都出さんは、自分で読みたいものを読めばOKと言われます。

 読むといえば、英字新聞や“TIME”や”Newsweek”などの雑誌を読むことが、いままで英語の勉強としてよくすすめられた方法です。

 もし、英字新聞や雑誌を読みたいと心から思っているのであれば、読んだらいいでしょう。

 しかし、とりあえず新聞なら、まずは雑誌からでは、まったく読まれることのない新聞や雑誌が積まれるままになるのがオチです。

 20代の宇都出さんがそうだった、とのことです。

 そこで、おすすめは本、つまり洋書です。

 新聞すら読めないのに、洋書なんて読めません、という人は心配しないでください。

 洋書を楽に読む方法について、あとで詳しく解説しますとのことです。

 なぜ、洋書なのでしょうか。

 それは、あなたが読みたいと思うものが見つかる可能性がきわめて高いからです。

 洋書といっても、何か教科書のようなものを読む必要はありません。

 あなたが興味のある分野や、仕事や生活のなかで必要としている分野の洋書を選んで、気軽に読み始めればいいのです。

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 興味のある分野や、仕事や生活のなかで必要としている分野の洋書を選んで、気軽に読み始めればいいとのことです。

 必要としている分野や、好きな分野の英語を読むということは、これまではほとんど不可能だったそうです。

 ほんの20年ほど前まで、英語の本といって手に入りやすいものといえば、学校の教科書、NHKラジオ・テレビ講座のテキスト、英字新聞や英文雑誌ぐらいでした。

 いまでは、昔とは違い、必要としている分野、好きな分野の本を、簡単に見つけられ、手に入れられるようになりました。

 オンライン書店のアマゾンで、あなたの必要としている分野、好きな分野のキーワードを打ち込んでみてください。

 さまざまな本が出てくるでしょう。

 日本より欧米のほうが先に進んでいる分野は、数多くあります。

 欧米で流行したものが、1年から数年遅れで日本に入ってきてはやることもよくあります。

 マーケティングやコーチングなどは、まさにそうでした。

 洋書を活用することで、あなたは多くの日本人よりも一歩も二歩も早<、最新の情報を手に入れることができるのです。

 そうなれば、英語がたとえ苦手であっても、読もうという気は起こるでしょう。

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 ほんの20年ほど前まで、英語の本といって手に入りやすいものといえば、学校の教科書、NHKラジオ・テレビ講座のテキスト、英字新聞や英文雑誌ぐらいでした。

 NHKの講座テキストなどを買っても、三日坊主で終わった人はいらっしゃいませんか。

 もともと英語が苦手だったり、じつはそれほど好きでもなかったりした方かも知れません。

 あまり関心やなじみのない内容であったり、必要ではない内容のものを読もうとすると長続きしません。

 英語講座のテキストなどは多くの人を対象に書かれたものですから、どうしても総花的な内容になりがちです。

 昔は、それを我慢して読むしかありませんでした。

 しかしいまは、あらゆるジャンルの洋書が簡単に取り寄せられます。

 自分となじみの浅い内容や空虚な内容のテキストを無理に読む必要は、もうないのです。

 読みたい分野の英文ということであれば、インターネットで興味のある分野に関するサイトやブログを探して読んだらいいのではないでしょうか。

 もちろん、それでもいいのですが、やはり読むなら本のほうがおすすめです。

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 読みたい分野の英文ということであれば、インターネットで興味のある分野に関するサイトやブログを探して読んだらいいのではないでしょうか。

 宇都出さんは、それでもいいのですが、やはり読むなら本のほうがおすすめと言われます。

 たしかに、興味のある分野に関するサイトやブログ、メールマガジンを読むのは手軽にできます。

 そういう意味で、サイトの敷居は本より低いのですが、まとまった量を読もうとすれば、本のほうが圧倒的にすぐれています。

 まとまった量を読んだほうがいいなら、サイトやブログをたくさん読めばいいじゃないですか、という声が聞こえてきそうです。

 これは実際にやってみると、サイトやブログ、メルマガは、まとめて読むにはけっこうしんどい媒体です。

 たとえば、ブログやメルマガでは、個々の記事との関係に、ちょっと無理があったり、矛盾することがあったりします。

 重複する部分も多々あります。

 ブログ記事やメルマガをただつなぎ合わせただけでは、本にはなりません。

 本は、矛盾する箇所や重複する部分が削ぎ落とされて、つながりのよいまとまった内容になっています。

 そのため、読みやすくなっている場合が多いのです。

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 宇都出さんは、見逃せないのが本の形だと言われます。

 当たり前に思われるかもしれませんが、本は長い歴史のなかで人が使いやすい形に進化しています。

 たとえば、

・さっと手に取ることができる

・ページをめくってすばやく全体を眺めることができる

・繰り返し読みやすい

 そのほか、長い歴史を持つ本には、まとまった量の情報でも楽に読めるようないろいろな工夫が詰まっています。

 本には著者のほかにほぼ必ず編集者が介在して、編集という作業が加わっています。

 編集作業では、タイトルや見出しづけなどもおこなわれます。

 これは大きな付加価値です。

 それをまとめた目次もついています。

 目次やタイトル・見出しがあることによって、読者はかなり楽に読めるようにな
っているのです。

 数百ページにわたって印刷されたブログ記事の束と1冊の洋書を比較すると、本がいかに読みやすい内容・形になっているかがわかるでしょう。

 Kindleなどの電子書籍はどうなんでしょうか。

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 それでは、Kindleなどの電子書籍はどうなんでしょうか。

 確かに、Kindleによって洋書が素早くしかもかなり安く手に入れられるようになりました。

 そのメリットは大きく、これを活用することは確かに重要です。

 しかし、まだ洋書を読み慣れないうちは、紙の本から読み始めることを強くおすすめするとのことです。

 宇都出さんは、紙の本ならではの形は読むうえで大きな力になっていると言われます。

 洋書や英文の楽で速い読み方の実践には、この形を最大限活用することが必要不可欠とのことです。

 聞くことの敷居の高さとして指摘した機械の必要性が、気軽に洋書を読むことを妨げます。

 電子書籍端末や、タブレット端末、スマートフォンで、かなり敷居は下がっているとはいえ、手に取りやすさ、扱いやすさではまだ紙の本にかないません。

 洋書を読むことに慣れるまでは、少々値段が高くてもペーパーバックなど紙の本を選んだほうがいいでしょう。

 洋書に慣れ、タイトルや見出し、目次などの本の形を生かす読み方にも慣れれば、電子書籍でも同じように読めるようになってきます。

 電子書籍も、本の形自体は踏襲しているからです。

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 宇都出さんは、これまで、

@英語を「勉強」するから「使う」へ

A「英会話」から「英語」を「読む」へ

 の重要性について話してきました。

 では、洋書をどうやって読むのでしょうか。

 宇都出さんは、これまで洋書を読んだことがない人も心配しないでくださいと言われます。

 これから紹介する読み方にそっていけば、とても楽に読めることに感動するでしょう。

 では、どんな洋書を読んだらいいのでしょうか。

 巻末に、おすすめの洋書が挙げられています。

 いずれの本も、心の持ち方、コミュニケーション、人間関係など、毎日の仕事や生活にすぐに役立つものばかりです。

 これらは、いわゆるビジネス書というジャンルで、ビジネス洋書とも呼ばれているものです。

 ビジネス洋書は日本語訳も多くあり、日本人が書いた同じような内容の本も数多く出ています。

 宇都出さんは、ただ、こういったビジネス書こそ、洋書で読んだほうがいいのだと言われます。

 洋書で読んだほうが、より中身を味わって読むことになり、実践、行動に移しやすく、成果をもたらすからです。

 ・・・・・・

 宇都出さんは、英語は日本語より簡潔な言葉で記憶に残りやすく、実践に結びつきやすいと言われます。

 ビジネス書は自分の仕事や生活に身近な内容なので、日本語ではさらっと読めてしまいます。

 ビジネス書の内容を実践しなければ、仕事でも生活でも変化は起こらず、成果は望めません。

 しかし、多くの人が読んだだけで、ついつい

「わかったつもり」

「できているつもり」

になってしまいます。

 ところが、これを洋書で読むと改めてその意味を考えさせられます。

 英語ではさらっと読めませんから、逆に言えば読んだぶんだけ日々の仕事や生活のなかで意識に残っているため、実践に結びつきやすいのです。

 たとえば、

 おススメ洋書の一つThe Effective Executives目次の前半部分を原書と翻訳本で並べてみましょう。

1 Effectiveness Can Be Learned
 → 成果をあげる能力は修得できる

2 Know Thy Time
 → 汝の時間を知れ

3 What Can I Contribute
 → どのような貢献ができるか

4 Making Strength Productive
 → 人の強みを生かす

5 First Things First
 → もっとも重要なことに集中せよ

 英語のほうがシンプルでスッと頭に入って、まるでキャッチフレーズのように日常で意識しやすいのです。

 ・・・・・・

 宇都出さんは、ビジネス洋書を原書で読むべき大事な理由があると言われます。

 英語という言葉をとおして、行動するのは自分であることを強く意識できます。

 英語には必ず主語がありますが、日本語にはなくても構いません。

 英語では、行動する自分という主体を強く意識させられるのです。

 たとえば、富士山を目の前に見ている人がいます。

 その人は何と言うでしょう?

 日本語であれば

”富士山が見える”

ですが、英語では

“I see Mt.Fuji.”

です。

 英語では見ているという「私」なしには、文章自体が成立しないのです。

 ”日本語文法の謎を解く−「ある」日本語と「する」英語”(金谷武洋/ちくま新書)では、日本語は自然を主体にした「ある」を重んじ、英語は人を主体にした「する」を重んじるということです。

 どちらがいいとか悪いとかという話ではありません。

 ですが、ビジネス書を読んで何か自分の仕事や生活を変革しようというとき、その行動を起こすのは自分です。

 日本語のビジネス書では、どこかで行動する主体がぼやかされているため、他人事としてとらえ、読み物として読んでしまいがちです。

 逆に、周りの空気を察して、それに合わせていくという欧米人には難しいことが、多くの日本人はいとも簡単にできてしまいます。

 それはもちろん強みであり、生かしていく必要があります。

 ただ、いま強く求められているのは、個々人が主体として行動することであり、そのために多くのビジネス書も読んでいるわけです。

 それを実践するため、深いところでの意識を変えるためには、洋書をとおして学ぶことが効果的なのです。

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 宇都出さんは、これまで英語が読めなかったのは、単語力と文法力に頼っていたからだと言われます。

 あなたは英文を読むとき、どんなふうに読んでいるでしょうか。

 おそらく、次のように読んでいるのではないでしょうか?

・英文に出てくる個々の単語に注目し、それぞれの意味を思い出す

・個々の単語とそれぞれの意味、そして文法知識を組み合わせて文章の意味を理解する

 つまり、英文を前から順番に、個々の単語という部分に分解して、それに文法知識を活用しながら全体の文章の意味を理解していく、という読み方です。

 これは、次の二つのアプローチに基づいた読み方といえるでしょう。

・部分から全体へと進む

 →ボトムアップ・アプローチ

・最初から順番に進む

 →リニア(直線)・アプローチ

 そしてここで使っている力は、次の二つです。

・単語力:個々の英単語の意味を導き出す

・文法力:文章の構造を把握し、文章の意味を導き出す

 英語の勉強でおこなわれていることの大半は、この二つの力に焦点を絞って、なんとか伸ばそうとするものだと言えるでしょう。

 宇都出さんは、単語を知らなくても英語は読めると言われます。

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 英文が読めないときは、単語力か文法力の両方、もしくはどちらかが足りないと考えていたのではないでしょうか。

 さらに、それを強化しようと勉強してきたのではないでしょうか。

 しかし、英文を読むうえでこの二つの力以外に、利用できる第三の力があることを知っていますか。

 その力は、いわゆる英語の勉強では注目されず、活用されなかった力です。

 ですが、実際に英語を使う際にはとても重要な力です。

 この力を活用すれば、もっと楽に英文が読めるようになります。

 あなたの単語力や文法力に不足があったとしても、それをカバーしてくれます。

 知らない単語があったとしても、複雑な文法構造だったとしても、文意を理解することを可能にするのです。

 十分活用してこなかった第三の力とはいったいどんな力なのでしょうか。

 それは、文脈力です。

 文脈力とは、文脈、すなわち全体の意味や流れを把握し、そこから個々の文章、単語といった部分の意味を理解する力です。

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 宇都出さんは、文脈力が重要だと言われます。

 全体の意味や流れを把握し、そこから個々の文章、単語といった部分を理解できるようになることです。

 この力は普段、日本語を使っているときにも活用しています。

 この力がないと、単語力や文法力だけでは言葉を理解できません。

 たとえば、次のような経験はありませんか。

 だれかが話をしているところに、途中から入って聞き始めたようなケ−スです。

 最初のうちは、そこで話されていることがつかめないし見えてきません。

 でも、ある瞬間、全体の流れや何について話されているかがわかると、急に話されていることがよくわかるようになります。

 逆に、伝えようとしている内容がわかっていれば、相手の表現がたどたどしくても、その意味がわかってきます。

 このように、文脈力は、日本語にしろ英語にしろ、言語を実際の生活で使う際には、必ず活用している力です。

 でも、英語の勉強ではほとんど注目されていません。

 ほとんどの英語の勉強は、英語を文脈から切り離しておこなうからです。

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 英単語帳で英単語の意味を覚える、とか、

 文法テキストである丈型の例文を理解する、とか、

 そこには「文脈」の入り込む余地はありません。

 宇都出さんは、このため、英語の勉強をすればするほど文脈力を活用せず、そこに意識が向かなくなると言われます。

 そして実際に英文を読もうというときにも、英語の勉強の延長で単語力と文法力だけで勝負しようとして、わざわざ苦しい戦いをしてしまいます。

 人は自分が知らないことは理解できません。

 私たちは物事を理解しインプットするということを、自分がすでに知っていることと結びつけながらおこなっています。

 人の話を聞いたり、本を読んだりして、何か新しい情報や知識を脳がインプットすることに対して、

 私たちはコンピュータがデータをダウンロードするように、ただ一方的に取り入れるイメージを思い浮かべるかもしれません。

 実際はそうではありません。

 私たちは持っている知識や情報、経験などのストックと新たな情報や知識をぶつけて共鳴させ、両者をつなぎながら、新たな情報・知識を理解していくのです。

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 宇都出さんは、文脈力が重要だと言われます。

 私たちは持っている知識や情報、経験などのストックと新たな情報や知識をぶつけて共鳴させ、両者をつなぎながら、新たな情報・知識を理解していきます。

 この共鳴現象を促進するには、自分が持っている膨大なストックから、新たな情報や知識に関連するストックを選び出して活性化する必要があります。

 宇都出さんは、全体の意味や流れを把握することで、あらかじめ、関連するストックを活性化させ、呼び出すことが可能になると言われます。

 私たちは新たな情報に接したとき、既存の知識や経験などと結びつけて自分の脳内にインプットさせています。

 ”あのことか!”

がそれです。

 会話の途中から入った場合、話されている内容が理解できないのは、どのストックを使えばいいかわからないため、共鳴現象が起こらないことが原因です。

 逆に、全体の意味があらかじめ把握できていれば、関連するストックが活性化し、ます。

 そこから相手が話したり、書いたりしている内容をすばやく理解し、さらには展開を予測することもできます。

 単語を知らなくても英語は読めるのです。

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 まずは、部分ではなく全体を理解するようにします。

 そうすれば、単語を知らなくても英語は読めるのです。

 文脈力が重要な理由が、もう一つあります。

 それは、部分の理解を単純に足しあわせても、全体の理解につながるとは限らないことです。

 宇都出さんは、簡単に言えば木を見て森を見ずだ、と言われます。

 いくら個々の木を見ていっても、全体の森はわからないものです。

 そして、個々の木すべてを見なくても、全体の森はわかります。

 たとえば、次のようなことです。

・ある文章の個々の単語の意味がわかったからといって、その文章全体の意味がわかるとは限らない。

 逆に、すべての単語の意味がわからなくても、文章全体の意味はわかる。

・ある段落の個々の文章の意味がわかったからといって、その段落全体の意味がわかるとは限らない。

 逆に、すべての文章の意味がわからなくても、段落全体の意味はわかる。

 これはゲシュタルトという言葉で知られてもいますが、部分を単に足しあわせただけではない、全体としての意味のことです。

 ゲシュタルトとは、ドイツ語の Gestalt のことで、部分の総和としてとらえられない合体構造に備わっている、特有の全体的構造のことをいいます。

 ゲシュタルトは、部分だけにとらわれるのではなく、全体をとらえることの重要さを示しています。

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 文脈力を使わずに、単語力と文法力だけで英文を読もうとするのは、個々の木を調べることだけで森全体を知ろう、という試みと同じだということです。

 森を知るためには個々の木を知ることも必要ですが、全部の木のことがわからなくても、森のことを知ることは可能です。

 そして、森全体を見ることで、個々の木について予測することも可能です。

 宇都出さんは、文脈力は対象とするものが長くなるほど重要になると言われます。

 勉強では使う機会がないにしても、実践で使う際にはとても重要です。

 では、文脈力を支える要素は何でしょうか。

 1つは、論理展開を予測しながら読むことです。

 たとえば、因果関係です。

 最初に原因となる話が書いてあってその次に結果が書いてあったり、最初に結果が書いてありあとにその原因が書いてあるといった流れはよくあります。

 この因果関係を頭に置いておくことで、文章を読みながら、次はこの原因が書かれているなとか、次は結果が書かれるなということを予測しながら読むことができます。

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 抽象的な概念を話したあとで、

 for example

ということで具体的な例を挙げることもあります。

 この場合は、最初に出てきた抽象的な概念に照らし合わせながら具体的な例を読んでいくことで、わかりやすくなります。

 but

 although

などが出てくれば、いままで述べられていたこととは逆の話が来ると予測できるでしょう。

 このように接続詞など、論理関係を表す言葉に注目することで、文脈をつかみ、楽に読むことができるようになります。

 論理展開から文脈をつかんでいくことについては

 paragraph reading

という呼び方で、最近の英語教育で取り上げられ始めています。

 パラグラフ、つまり、いくつかの文章からなるかたまりに注目して、長文の流れやテーマを素早く見抜いていく読み方です。

 パラグラフ単位で書かれている内容を把握していき、文章全体の概要を把握することが最終的な目標になります。

 パラグラフごとに要旨を把握し、それをつなぎあわせて表現することが必要になります。

 文と文の関係に着目することと、その延長線で、論旨の流れを把握することが大切です。

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 文脈力を発揮するために、宇都出さんは、もっと基本的で、単純な要素がもう一つあると言われます。

 それは、その内容を知っているかどうかです。

 つまり、いま読んでいる内容に関する知識や経験です。

 それがあれば、単語を知らなくても英語は読めるのです。

 これが、文脈力を支える2つ目の要素です。

 英文に書かれている内容を知っていれば全体の意味はわかるわけで、そこから単語や文章の意味を予測・類推できます。

 たとえば、ダルビッシュ有投手についての英文記事があります。

ARLINGTON, Texas -- Japanese ace Yu Darvish will be pitching in a Texas Rangers uniform in 2012, agreeing to a six-year deal worth approximately $60 million on Wednesday.

Rangers general manager Jon Daniels said Thursday morning on ESPN Dallas 103.3 FM that Darvish can opt out of the sixth year if he hits two different performance thresholds. Both involve the Cy Young voting.
(espn.com)

 ダルビッシュ投手とレンジャーズが、正式に契約することを伝える内容になっています。

 野球好きの人はもちろんのこと、ほとんどの人が記事の内容を理解し、けっこう楽に英文を読めるのではないでしょうか。

 それは、すでにこの記事の内容に関する知識をもち、そこから文脈をつかみ、個々の文章や単語の意味も予測できたからです。

 もちろん、野球にまったく関心がない人やダルビッシュ投手のことを知らない人は、文脈力がほとんど使えなかったでしょう。

 個々の単語ではなく、文章全体がわかったかどうかで判断してみてください。

 知らない単語がいくつかあって詰まるかもしれませんが、なんとなくある程度の意味はわかったと思います。

 試しに、もう1回読んでみてください。

 今度はかなり楽に読めたでしょう。

 英語を読む際に使える力は、単語力と文法力だけではないのです。

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 そして、文脈力を発揮するために、宇都出さんは、英語の文章ではタイトルが重要なポイントだと言われます。

 新聞などでは、太字で最初に掲げられているのが記事のタイトルです。

 たとえば、”日本とインド、 原子力協定に署名”の事例です。

 Abe, Modi sign agreement on nuclear power

 Prime Minister Shinzo Abe on Nov. 11 signed a civilian nuclear   cooperation pact with visiting In-dian leader Narendra Modi as he pushes to promote exports of Japanese nuclear technology to bolster the economy.
 The treaty will allow Japan to transfer nuclear technology-related components and help build reactors in India, where countries like China and France are also looking to invest. (The Japan Times)

 タイトルを読むことで記事内容を予測し、自分が持っている知識を活用することで、楽に英文を読めます。

 タイトル、もしくは見出しと呼ばれているものに注目し、積極的に活用するのが文脈力をフルに働かせるポイントの一つです。

 タイトルや見出しがあるとないとで、読む楽さ加減が大き<違ってきます。

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 今度は日本語の例です。

 次の文章は何について書いているでしょうか。

”鉄のくさりを両手で握って、行ったり来たりをくり返す。最初はゆっくりしているが、次第に速くなる。しかし、ゆっくりでも速くても、リズムはつねに一定である。立つこともできるし、座ることもできる。並んですることもある。”

(石黒圭著”読む技術”光文社新書/P.61)

 すぐにはピンとこないのではないでしょうか。

 しかし、先はどの文章にこんなタイトルがついていたら。

”ブランコ”

 もう一度先ほどの文章を読んでみると、よくわかります。

 タイトルを知らずに読んだときに比べて、格段に読みやすく、理解しやすかったでしょう。

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 ある心理学の実験で、被験者に

「何の話であるか」を、

あらかじめ情報を与えられたグループとそうでないグループとに分けて、理解度を比べたものがあるそうです。

 内容理解度を測るテストの結果には、大きな差が出ました。

 あらかじめ情報を与えられていた方が、そうでない方のグループの理解度を人きく上回りました。

 さきの例の

「ブランコ」という、

 タイトルを知ることでブランコに関してすでに持っている知識や情報、経験が思い出されます。

 われわれは、それを使って展開や内容を「予測」し、それによって楽に読めて理解できるようになるのです。

 ただし、予測することによって誤解する場合もありますので注意が必要です。

 洋書には、タイトルや見出しがたくさん含まれているものが多いです。

 宇都出さんは、洋書を読むことをおすすめするのは、文脈力を最大限活用できるというメリットがあるからだと言われます。

 つけられているタイトルや見出しを活用することで、実はかなり楽に読むことが可能なのです。

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 宇都出さんは、もう一つ文脈力をフル活用するポイントがあると言われます。

 それは、繰り返しです。

 ダルビッシュ投手の記事のところで、

「試しに、もう1回読んでみてください。今度はかなり楽に読めたでしょう」

と書いてありました。

 なぜもう1回読むように促したのでしょうか。

 繰り返し読むことで、内容をある程度把握しながら、楽に読むことができますので、それを実感してもらうためでした。

 ブランコの文章でも、たとえタイトルがなかったとしても、1回、2回と繰り返し読むことで、これはブランコのことだなとわかってきます。

 それがわかれば、かなり楽に読めるようになります。

 英語の文章も、最初は全体の意味がわからない場合が少なくありませんから、いきなり楽に読めるわけではありません。

 しかし、はじめから繰り返すことを想定していれば、最初から楽に読めなくても苦にならないでしょう。

 繰り返し読むことを覚えれば、たとえこれから読もうとする洋書や文章の内容に関する知識や情報、経験がなくても、恐れることはありません。

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 宇都出さんは、タイトルや見出しを活用するとともに、繰り返し読むことが大切だと言われます。

 まず、書かれている内容を少しずつでも理解して自分のなかに取り入ます。

 さらに、繰り返しによって取り入れた知識を活用して読むことができます。

 こうして、楽に読んでいけばいいわけです。

 繰り返しをしやすいのが、聞くよりも読むことなのです。

 しかも、サイトや新聞よりも本という形、すなわち洋書なのです。

 洋書を読むことと、洋画を聞く(観る)ことを比べてみてください。

 DVDの登場により、テープに比べて巻き戻しや早送り、見たい箇所に飛ぶことは楽になりました。

 それでも、本に比べれば格段にその操作性は劣ります。

 この点からも、洋書を読むことは楽に英語を使うための手段としておすすめなのです。

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 宇都出さんは、文脈力を活用することで英語の文章も思った以上に楽に読めると言われます。

 ほとんど活用してこなかった文脈力を活用することで、現在の単語力・文法力でも、あなたが大量の英文を読むことが可能になります。

 大量の英文を読めば、そのなかで単語力、文法力も身についてきます。

 しかも、それは人為的に身につけた単語力や文法力などとは違って、英語を実践して使うなかで身についたものです。

 ですから使うことに役立ち、それがさらに英之を読むことを楽にしていきます。

 文脈力をテコにして単語力や文法力をつけるというサイクルを回すことで、英語を実際に使いつつ英語力を上げることができます。

 文脈力を活用する原則を簡単にまとめると、

1.タイトル・見出しがわかれば楽に読める

2.1回目よりも2回目、繰り返せば楽に読める

となります。

 この原則を徹底的に活用することで、英語はもっと楽に読めるようになります。

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