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◆酒井 穣氏の”ビジネス英会話のプロがやっているシンプル英語学習法”から

 今日は、”ビジネス英会話のプロがやっているシンプル英語学習法”(2011年7月 PHP研究所刊 酒井 穣著)からの話題です。

 酒井 穣さんは1972年、東京生まれ慶応大学理工学部卒、オランダTilburg大学経営学修士号(MBA)を取得し、商社にて新事業開発や海外営業などに従事しました。その後、オランダのメーカーに転職、移住し、仕事に精力的に取り組みつつ、2006年末ベンチャー企業を創業しました。2009年、フリービット鰍ノ参画するために帰国し、執筆当時、戦略人事部ジェネラルマネージャーでした。
 著書に、”はじめての課長の教科書””あたらしい戦略の教科書””リーダーシップでいちばん大切なこと”などがあります。

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 英文を読むことはできても、なかなか話せません。

 スピーキングの学習をしても、長続きせずに挫折してしまいます。

 どうすれば英会話ができるようになるのでしょうか。

 それには、酒井さんは、

 ”英単語を1つ取り上げる、英語でその言葉を説明する、電子辞書の記述と比べる、辞書の文章を3回つぶやく。”

 ということで、これまで挫折した人も、どんどん話せるようになると言われます。

 酒井さんは、中学・高校時代、英語が大の苦手科目で、夏休みに補習を受けていたそうです。

 その後、日常仕事を英語でこなし、母校のビジネス・スクールでは英語で臨時講義を頼まれるまでになりました。

 では、どのような学習法でビジネス英会話のプロとなったのでしょうか。

 本書は、独りでできる、スキマ時間だけでできる、電子辞書1つあればできる、画期的勉強法を提案しています。

 3カ月で英語のプレゼンができ、12カ月で英語の商談ができるというものです。

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 酒井さんは、大学を卒業するまで、海外旅行どころか、そもそも飛行機にすら乗ったことがなかったそうです。

 もちろん、英語を話す外国人と接触するような機会もありませんでした。

 中学・高校時代は、英語は自分にとってトラウマになるぐらいの苦手科目だったそうです。

 テストが返されるたびに、点数のところを折って隠したりしていました。

 夏休みには、いつも学校で英語の補習を受けさせられていたほどだったそうです。

 そんな過去を持ちながら、英語の本の執筆を依頼されるぐらいまで英語力を高めることができたのはなぜでしょうか。

 ほとんどの本は、

「英語ぐらいできないと、グローバル社会は生きていけない」

という意味のことが書かれています。

「英語はビジネスの道具」

であり、それを持たない者は、この大変化の時代に取り残されるというのです。

 しかし、英語を学ぶ意義についてこれ以上深く突っ込んでいる本は皆無と言ってよい状態だったと、言われます。

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 酒井さんは、「英語ぐらいできないと、グローバル社会は生きていけない」というのは、読者を脅かして英語学習に向かわせようとする方法だと言われます。

 対象となる人の外側から心理的に押されるようにして生まれるモチペーションは、特に外発的なモチベーションと呼ばれます。

 これに対して、自らの内側から湧き上がるようにして生まれてくるモチペーションは、内発的なモチベーションと呼ばれます。

 酒井さんは、外発的なモチベーションは内発的なモチベーションと比べて長続きしないという特徴があろ、と言われます。

 英語の習得には、どうしても、それなりに長い期間が必要です。

 短期間でマスターといった英語本の、第2版が出ることはないのです。

 長い期間にわたって高いモチベーションを維持するための鍵となるのは、内発的なモチベーションに他なりません。

 本書は他の多くの英語本と違い、内発的なモチベーションに配慮しています。

 外国語の習得に関する多くの先行研究では、

 母国語とは大きく異なる外国語の習得には、勉強を継続させるための高いモチベーションと、相当な時間が必要だ

ということです。

 そして、英語を習得するには、読み、書き、聞き取り、会話のすべてを繰り返し実行することが重要です。

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 酒井さんは、つぶやきを重視する学習法を提唱しています。

 いかなる学問も短期間でマスターすることが不可能であるように、英語も短期間でマスターすることはできません。

 そもそも、短期間で簡単にマスターできないからこそ、マスターすることに意味も生まれるのでしょう。

「短期間でマスター」といった宣伝文句がウケてしまう原因は、日本のビジネスパーソンたちが、

・細切れの時間しかない

・ITやマネジメントなど、英語以外にも勉強すべきことが山ほどある

・現時点で英語を使う機会も必要もない

からです。

 そこで酒井さんは、細切れの時間の利用を提唱しておられます。

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 専門家の間では、外国語の習得能力は、その人の社会的地位、職業、教育レベル、知能などとはほとんど無関係だという認識が主流のようです。

 また、外国語を身につける難しさは、一旦大人になってしまえば、20代も50代もほぽ変わらないとのことです。

 酒井さんは、年齢を理由に英会話をあきらめてしまうのは早計だと言われます。

 その人のバックグラウンドや年齢には関係なく、この本でご紹介する学習法は活用できるとのことです。

 さらに、単なるコミュニケーションの道具としての英語を離れ、英語の学習が持つ驚くべき可能性についても述べておられます。

 それは、英語の習得は他の学問の学習では得られない

「究極のライフハック=人生のクオリティを向上させる取り組み」

として位置づけるということです。

 具体的なお話はこれからです。

 ・・・・・・

 酒井さんは、大人になってから外国語を習得することは簡単ではない、と言われます。

 研究結果にばらつきはありますが、外国語の習得は、だいたい小学校の高学年を過ぎてしまうと、極端に難しくなることが知られています。

 人間の脳内には言語を獲得するためのシステムがあり、そのシステムは期間限定で活性化されているという臨界期仮説の前提となっています。

 本来であれば幅広い環境の変化に適応できることが、進化の過程で生き残る生物の特徴であるはずです。

 人間にとって言語とは、異なる文化環境に適応するために必要なものなのです。

 外国語の習得が多くの人々にとって難しいという事実は、生物学的な意味ではどうにもおかしなことに思われます。

 新しい運動や、什事のスキルなどは、大人になってからも十分習得することが可能です。

 でも、外国語だけはそうではないのです。

 これは、人間にとって外国語を習得することには、見過ごせないリスクがあることを示唆しています。

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 人間にとって外国語を習得することには見過ごせないリスクがある、とはどんなことでしょうか。

 誰もがほぼ例外なく母国語は使えるのに、大人になってから学ぶ外国語の習得には大きな困難があります。

 それにはなにか特別な理由があるのではないか、と考えられます。

 小学校高学年は、大人になってもそれなりに当時の記憶が残っているギリギリの線です。

 この時期は、母国語による自我が固まりはじめる時期と重なります。

 ここで外国語を学習するのは、母国語の自我の上に外国語の回路を重ね書きすることになります。

 これは自我の同一性を維持すべき人間にとって、それなりに危険なことです。

 人の精神を不安定にさせることなのかもしれません。

 実際に英語をある程度話せるようになると、日本語の人格と英語の人格にボンヤリとした違いが感じられるようになります。

 いわば軽い二重人格のような状態になります。

 そうすると、思考が幼稚化してついに自分の人格成長が後退するかのような危機感すら味わったことがある、という人もあります。

 俗に、海外に暮らす人にはメンタルヘルス上の問題が生じることが多い、と言われます。

 外国語を習得する過程で、やはり自我の同一性が危機にさらされるからではないでしょうか。

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 酒井さんは、言語は人間にとって単なるツール以上の深い意味があると言われます。

 母国語に加えて外国語を習得するということは、人間の精神にとって想像以上に負担となることなのかもしれないからです。

 もしかしたら、語学の習得というのは自我を超越する精神の鍛錬という側面すらあるのかもしれません。

 脳に関することは不明な点が多く、あくまでも仮説であることには注意が必要です。

 この問題の原因には、認知心理学の仮説によってだいぶスッキリとした説明をつけることができます。

 人間の脳内における情報処理では、

・意識的に物事を判断する「統制処理 controlled processing」と、

・無意識に判断する「自動処理 automatic processing」が

並列で利用されています。

 統制処理には短期記憶(正確にはワーキングーメモリ)が主に利用されるのですが、この記憶容量には限りがあります。

 また、その名の通り、記憶を保持していられる時間が短いことが知られています。

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 無意識に判断する自動処理=automatic processingが利用するのは、主に長期記憶と呼ばれる記憶システムです。

 そこでは情報はゆるやかに忘れられてはいくものの、基本的に死ぬまでずっと保持されます。

 これに対して、短期記憶は正確にはワーキングーメモリ内の記憶です。

 母国語のスピーキングでは、短期記憶は話したい言葉の意味や内容を意識的に構築するための統制処理に利用されます。

 一方、文法や言い回しのパターン、発音などは、長期記憶にアクセスすることで自動的に処理されています。

 英会話が苦手な人は、まず、話したい文章の意味や内容を日本語で考えてしまいます。

 それを、日本語で暗記されている長期記憶内の英文法にアクセスしつつ、短期記憶内で英作文をし、それから発音やアクセントを決めて話しています。

 このステップを短時間にこなそうとすることは、脳にとっては大変な作業です。

 結果として、短期記憶は、容量オーバーを起こします。

 かなり英語が読める人でも、スピーキングとなるとさっぱりという人は少なくありません。

 酒井さんは、英会話は多くの日本人にとって、短期記憶が爆発するパニック状態に近い経験になっているのではないかと言われます。

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 酒井さんは、和文英訳というステップを飛ばすことが必要だと言われます。

 英語を書く場合は、そもそも発音に注意する必要がありません。

 自分の言いたいことをじっくりと考え、それから英文法に注意をしながら英作文を行います。

 短期記憶に求められる作業は、短い時間内に集中しません。

 英語を読む場合は翻訳をするだけですから、短期記憶への負担は比較にならないぐらい軽いです。

 日本の学校教育では、与えられた英文を日本語に訳しつつ英文の持つ意味を理解するよう教えられます。

 高校・大学入試において、英文和訳が配点の大きな部分を占めていることが、この状況に拍車をかけています。

 いざ独学でスピーキングをモノにしようと決意すると、塾や学校で習った和文英訳の要領でやろうとします。

 つまり、言いたいことを日本語で考え、日本語の文章を作り、それを英訳してから話そうとします。

 この翻訳のプロセスを超速でこなすことが、英会話をマスターするための道だと答えてしまっても無理のないことです。

 しかし、これがうまくいかないことは、日本人がいまだに英会話に苫労していることが証明しています。

 和文英訳、つまり翻訳というステップを飛ばさない限り、いつまで経っても日本人が英語を流暢にしゃべることはできません。

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 酒井さんは、翻訳を飛ばすということは、よく言われるように英語で考えるということだと言われます。

 英語で考える力を身につけるのは、英語の回路を脳内に形成するということです。

 大切なことは、スピーキングースキルの差はそのまま脳内における英語の回路の発達段階を示しています。

 こうした脳内における認知のプロセスというのは、本当のところはどうなっているのか不明な部分が多いです。

 したがって、このような仮説を鵜呑みにすることはできません。

 しかし、言語にはそれを認知する脳内のプロセスが存在することは確かです。

 少なくとも、日本語の認知のプロセスと、英語の認知のプロセスが同じではないのは明らかです。

 日本語の認知プロセスを使って英会話を試みることは、ウィンドウズ上でマックOS用のソフトを走らせるようなものだと想像されます。

 英語を読めても書けても、それが日本語の回路に依存した作業であるかぎり、英語の回路はほとんど未発達のままということです。

 では、聞き取れるのに話せないのはなぜでしょうか。

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 酒井さんは、聞き取れるのに話せないのはなぜか、について解説しておられます。

 英語のリスニングができる人にも、スピーキングとなると苦手という人がたくさんいます。

 多聴というキーワードでもって、英語のシャワーを長いこと浴びているのに、まったく話せないという人も少なくありません。

 確かに、それなりにリスニングができる人というのは、英語を英語のまま聞き取っているので、すでに英語で考えることの素地はできていると思われます。

 では、何か問題なのでしょうか?

 語彙には、聞き取ったり、読んだりするときに利用する受身の語彙

 passive vocaburary

と、書いたり、話したりするときに利用する自発の語彙

 active vocaburary

の2種類があります。

 この受身の語彙と、自発の語彙は、同じではないのです。

 日本語の場合も、かなり難しい語彙を読むことができても、その多くは、自分ではほとんど会話では使わない語彙だったりします。

 こうした受身の語彙と自発の語彙の間にある差は、母国語よりも外国語で大きくなるという報告もあるようです。

 多聴は、外国語の習得にとってとても重要な学習です。

 しかし同時に、聞いているだけでは決して話せるようにはならないということも知らないといけません。

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 酒井さんは、語彙には、聞き取ったり読んだりするときに利用する受身の語彙と書いたり話したりするときに利用する自発の語彙があると言われます。

 受身の語彙は、なんども実際に話したり書かれたりしてはじめて、自発の語彙にレベルアップします。

 そしてこのレベルアップを支えるのは、アウートプット学習に他なりません。

 オランダのビジネスパーソンは、昼食後に同僚と連れだって散歩をするという文化を持っているそうです。

 酒井さんはオランダにいたころ、こうした文化に溶け込もうと、昼食後はいつも同僚と会社の周辺を、時にかなり遠くまで歩いたものだったとのこと。

 このとき同僚との会話は、仕事以外のプライベートな話題になりました。

「今年の夏のバカンスはどこに行くか」

「子供が学校で、こんなことを勉強している」

「妻が、カルチャースクールの友だちと仲良くなった」

といった話題です。

 しゃべり慣れたビジネスの単語を使う仕事中とは異なり、こうした自由な話題について話すのはとても大変でした。

 まさに、聞き取れるのに話せないという体験でした。

 特に、オランダ人、イギリス人、アメリカ人、スウェーデン人といった多国籍環境で、日本の文化を説明しようとしても、英単語が口から出てきませんでした。

 みなが興味を持って聞いてくれるのに、それを説明するのに適切な英単語が自発の語彙になっていなかったのです。

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 酒井さんは、試しに、英語で自己紹介をしてみてください、と言われます。

 普段、ほとんど英語を使わない人は、名刺の裏面にプリントされている自分の部署名すら、英語ではスラスラとは出てこないはずです。

 いかなるビジネスにおいても、英語で自己紹介をする機会というのは今後増えていくはずです。

 ここで一度、しっかりと、自己紹介で使うような自発の語彙は鍛えておくべきでしょう。

 また、英語でメールをやりとりできるような同僚や友人がいたら、つまらないことでもかまわないので、毎日英語でメールを書いてみるのもよい試みです。

 このとき、相手は必ずしも外国人である必要はなく、ともに英語を学ぼうとする日本人同士でも問題ありません。

 英語でメールを書きながら、簡単な単語すら出てこないことを自覚し、自発の語彙を鍛える必要性を体感することが目的だからです。

 悔しいことではありますが、同時に、メールを重ねるごとに自発の語彙が徐々に増えていくことも経験できるはずです。

 その喜びをかみしめながら、前に進みましょう。

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 酒井さんは、英会話つぶやき学習法を勧めておられます。

 英語というのは、使わない限り上達しないものです。

 そして、英語を使う機会というものは、待っていても訪れないものでもあります。

 ならば、英語を使う機会を自ら作り上げてしまうまでです。

 それが、つぶやきです。

 英語は、力がついてから使うのではなくて、力をつけるために使うのです。

 酒井さんは、とにかく英語を英語のまま話すというアクションこそが、脳内に英語の回路を形成することにつながると考えているからと言われます。

 英語でつぶやくということは

「自分が言いたいこと」と

「自分が実際に言えること」の

間にあるギャップを、悔しさや痛みとして繰り返し、繰り返し、何度も、何度も実感することです。

 こうした悔しい気持ちを実感すればこそ、学習者ははじめてこのギャップを埋めたいという学習への自然なモチペーションを得ることができます。

 そして、ギャップを一つひとつ克服する内的な喜びも経験することができるのです。

 日本語でゆっくりと考えることができる英語の読み書きや、理解が不十分なままでも聞き流せるリスニングでは、決して経験できないことです。

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 酒井さんは、英会話つぶやき学習法を勧めておられます。

 聞き流すだけのリスニングとつぶやき学習法では、学習の密度、脳に汗をかく量が異なります。

 こうした学習の密度こそ、どうしても勉強の時間がとれない、忙しいビジネスパーソンが気にするべきポイントなのです。

 人間のモチベーションには、内側から湧き上がってくる内発的なモチベーションと、外側からの働きかけによって生まれる外発的なモチベーションがあります。

 外発的なモチベーションというのは、内発的なモチベーションと比べて持続力に乏しいという欠点があります。

 義務感や不安感から英会話を勉強しようとしても、なかなか続かないというのは仕方のないことなのです。

 酒井さんは、ここで鍵となるのは、いかにして英会話と内発的なモチペーションをつなげるのかという視点だと言われます。

 つぶやき学習法がねらう、自ら設定したギャップを、少しずつ乗り越える喜びを求める態度は、内発的なモチベーションにフォーカスしようとするものです。

 多くの日本人が英語の学習に挫折するのは、結局、内発的なモチベーションを得られていないからではないでしょうか。

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 酒井さんは、外国語の習得において、外国語でつぶやく学習法に効果があるという報告を紹介しておられます。

・1957年に言語学者であり聖書翻訳家でもあったユージン・アルバート・ナイダさんの著書

 ”Learning a Foreign Language”(Friendship Press)

によってなされているそうです。

 ユージン・アルバート・ナイダさんは1914年アメリカ・オクラホマ州オクラホマシティ生れのアメリカ合衆国の言語学者です。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校、南カリフォルニア大学、ミシガン大学を卒業した、アメリカ構造主義言語学の代表的な学者のひとりでした。

 アメリカ構造主義言語学は、サピアとブルームフィールドを中心として文字をもたないアメリカインディアンの言語調査から始まった言語学です。

 言語は経験・習慣の型であるとして、1925 年から1950 年ごろまでいろいろな方面から盛んに研究されました。

 その他にも、つぶやくという勉強法を好意的に取り上げている書籍もあるそうです。

 ただし、つぶやきに関する記述の分量が多くなく、その効果についても、英語を話す機会が増えること以上の理由は挙げられていません。

 これに対して、酒井さんは、英会話の初級を抜け出そうとする人々を対象としつつ、つぶやき学習法は英会話力の涵養に有効と述べておられます。

 そして、楽しみながら実施していくにはどうしたらよいかを中心に示そうとしておられます。

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 酒井さんは、相当量のつぶやきを通して、英会話の力をつけたとのことです。

 生活の中で、感じたり考えたりしたことを、英語で表現しようというのがつぶやき英語学習法です。

 日常は決まりごとの繰り返しですので、難しいことばかり考えているわけではありません。

 モノローグ中心でつぶやく英語学習で、英語で考えるクセがついたと言う人もいるようです。

 また、口語のリスニングにも効果があるように思われます。

 いろいろとつぶやいていると、自分の考えがまとまることが多いのは嬉しい誤算だったそうです。

 オランダ時代、酒井さんは、仕事場として個室を与えられていたため、仕事をしながら常に、その仕事に関連することを英語でつぶやきました。

 そこにたまたま秘書が入ってきて、気まずい空気が流れることも何度となくあったそうです。

 ですが、その気まずい空気にめげなかったことが、英会話の力を支えているのは間違いない、とのことです。

 とはいえ、日本の職場環境ではなかなか個室が与えられることはなく、仕事をながら英語をつぶやくと周囲の迷惑になりかねません。

 そこで、酒井さんは、脳内で英語をつぶやくという方法を考えていただきたい、と言われます。

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 酒井さんは、英語で夢をみよう、と言われます。

 このため、意図的に、寝ている間もヘッドホンで英会話のCDを聞いていた時期があるそうです。

 英会話のCDを聞きながら眠ると、どうしても眠りが浅くなりますんどえ、疲れが溜まっている人にはオススメできないとのことです。

 これは、毎日の睡眠時間を英会話の学習にあてるという、ある意味で究極の学習法でもあります。

 夢は、人間に限らず他の多くの動物にも見られる本能的な現象です。

 進化の過程で多くの種に残った現象なので、何らかの重要な意味があることは容易に推測されます。

 せめて、夢の中では、ネイティブのように流暢に話したいものです。

 しかし、実際には、夢の中でも相手の会話のペースに遅れまいと焦りながら英語を話したり、相手の会話がうまく聞き取れなかったりします。

 そのため、睡眠中までストレスを感じることになります。

 昨晩の夢が日本語の夢だつたのか、英語の夢だったのかすら忘れてしまうようになることもあります。

 夢の中の登場人物の顔を思い出して、おそらくは日本語だったか英語だったかは予測がつきます。

 これぐらいになると、もはや普通に眠ることが、英会話のトレーニングになるのではないかと思われます。

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 酒井さんは、英語で夢をみよう、と言われます。

 夢は、人間に限らず他の多くの動物にも見られる本能的な現象です。

 進化の過程で多くの種に残った現象ですので、何らかの重要な意味があることは容易に推測されます。

 しかし、なぜ動物が夢をみるのかということは、現代の科学ではまだよくわかっていないようです。

 有力な仮説のひとつに

「夢は、重要な情報を忘れないようにする脳の活動に由来する」

というものがあります。

 この仮説からは、英語で自由に夢をみられるようになるには、留学や海外駐在などといった

「英語がどうしても必要な環境」

に置かれることで、脳が英語を

「生命維持のために重要」

と判断しないと難しいという結論が導き出されそうです。

 留学や海外駐在のチャンスはなさそうな人は、せめて海外旅行で、

「ここで道に迷ったら、日本に帰れない」

といった緊張感を味わうことで、英語の夢をみやすくなるのではないかと思います。

 経験談にすぎませんが、初学者でも英会話のCDを聞きながら眠れば、断片的な英語の夢をみることは可能だと思います。

 それは、脳が英語を重要と認識しつつあり、脳内に確実に英語の回路ができはじめていることの証拠です。

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 酒井さんは、1年間の学習計画を立てようと言われます。

 英会話の学習には長い期間が必要ですが、あまりにのんびりとしたペースでは飽きてしまいます。

 そこで、勤務する会社が1年後に英語の公用語化に踏み切ると想定してみます。

 それに対して、ワクワクして臨めるような1年間の学習計画を立てるのです。

 まず実践レベル1の3ヵ月。

 ビジネス的には、ストーリーの決まった英語のプレゼンができるレベル、人間関係構築という視点では、英語で自己紹介ができるレベルをめざします。

 つづく実践レベル2。

 ビジネス的には英語でビジネスをしている夢をみるレベル、人間関係構築という視点ではノンネイティブと楽しく英語で会食ができるレベルをめざします。

 そして実践レベル3.

 より本格的なビジネス環境や、海外駐在となっても自然な英会話ができるようなレベルをめざします。

 これらはそれなりに高い目標ですが、しっかり1年間の学習を続ければ、目標に到達することは、それほど難しいことではありません。

 これを、たった1年と考えるか、1年もと考えるかです。

 ぜひ、たった1年ぐらいなら、やってみようというメンタリティーで臨んでいただきたいとのことです。

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 酒井さんは、何かを学習するときは、インプットばかりではなくて、アウトプットも重視しないといけないと言われます。

 専門家たちの間でも、語学の学習にはインプットとアウトプットのどちらも重要であるという点は広く合意されています。

 この点に関して残っている議論は、インプットとアウトプットの最適な時間配分ぐらいだそうです。

 英語をモノにしたい人は、

・リーディングやリスニングといったインプット形式の学習ばかりでなく、

・ライティングやスピーキングといったアウトプット形式の学習もこなさないとならない、

ということです。

 ところが、英語に苦手意識を持っている日本人の多くは、

・オーディオブックなどを活用してリスニングには励んでいても、

・ライティングやスピーキングといったアウトプット形式の学習は、

機会がないとか面倒くさいことを理由に、ほとんどしていません。

 インプット形式の英語学習には、一部理解が不十分なところがあったとしても、聞き流したり、読み飛ばしたりできてしまうという甘えが入り込みます。

 アウトプット形式の学習では、自分の理解が不十分なことは、そもそもアウトプットできませんから、そのまま放置しておくという甘えが生まれません。

 これまで紹介したつぶやき学習法は、このアウトプット形式の学習の一つです。

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 酒井さんは、英語学習の時間マトリクスについて触れておられます。

 時間管理のマトリックスは、7つの習慣の第3の習慣、最優先事項を優先するという、タイム・マネジメントに関わってくるものです。

 7つの習慣は、スティーブン・R・コヴィーによって書かれ1996年に出版された書籍のタイトルです。

 第一の習慣・主体的である(Habit 1 Be Proactive)
 第二の習慣・終わりを思い描くことから始める(Habit 2 Begin with the End in Mind)
 第三の習慣・最優先事項を優先する (Habit 3 Put First Things First)
 第四の習慣・Win-Winを考える (Habit 4 Think Win/Win)
 第五の習慣・まず理解に徹し、そして理解される(Habit 5 Seek First to Understand, Then to Be Understood)
 第六の習慣・シナジーを創り出す(Habit 6 Synergize)
 第七の習慣・刃を研ぐ (Habit 7 Sharpen the Saw)

 経済評論家の勝間和代さんは、作業を重要度と緊急度の2軸で分類して、それぞれのボックスを,

 消費の時間,投資の時間,浪費の時間,空費の時間

と定義し、時間泥棒である浪費や空費の時間を投資にまわそうと言っておられます。

 つぶやき学習法実践レベルは、通勤時間と無駄な会議の最中を主に利用する勉強法です

 日本にいる限り、通勤時間や無駄な会議が見つからなくて困るということはないはずです。

 とにかく勉強だということで、自宅で机に向かわないことが重要です。

 自分にとってどの時間が空費と浪費に相当するのかを知ることは、語学の勉強に限らず、非常に重要です。

 こうした無駄な時間を、自分への投資の時間にゴツゴツと変えていくことが、スキルを伸ばしていくための学習戦略の王道だからです。

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 酒井さんは、無駄な時間を自分への投資の時間に変えていくことが大切と言われます。

 通勤の時間と無駄な会議というのは、空費と浪費の最たるものです。

 それ以外に、食事やトイレの時間も利用することが可能な時間です。

 ただし、とにかくそれを負担に感じてしまうようであればよくありません。

 少しずつつぶやきの回数を増やしていくような形で、とにかく長期にわたって継続させるようにします。

 実践レベルで準備する道具は次のものです。

・電子辞書(英英辞典を含むもの)

・クリップ10個(右のポケットに入れておく)

・スケジュール帳(日付の入ったもの)

 つぶやき学習法には、英英辞典を使います。

 最近は、辞書といえば電子辞書という時代になっています。

 そして、多くの電子辞書には、はじめから英英辞典が入っています。

 しかし、英英辞典であれば、なんでもよいというわけではありません。

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 酒井さんは、電子辞書や英英辞典について選び方を述べておられます。

 電子辞書を選ぶときにとくに注意することは、その電子辞書に入っている英英辞典が

「英語を学ぶ外国人用のもの」なのか、それとも

「英語を母国語とするネイティブ向けのもの」なのか

に注意することです。

初学者はもちろん、英語を学ぶ外国人用のものを選ばないとなりません。

 英語を学ぶ外国人用の辞書として有名なのは、Oxford,Longman,Cobuildあたりの辞書です。

 通常はEnglish learner's dictionaryか、それに近いことがタイトルまわりに書いてあります。

 Websterの辞書は評判が高いものの、日本でいう広辞苑に相当するような、英語を母国語とするネイティブ向けの、かなりガチッとした辞書です。

 初学者は避けたほうが無難だと思います。

 ただし、英語の読解力にはそれなりに自信があるという人は、Websterも考慮に入れるべきでしょう。

 さらに、英英辞典には、大きく分けてアメリカ英語寄りのものとイギリス英語寄りのものがあります。

 しかし、特に英語を専門としない普通の日本人であれば、初学者のレベルから、アメリカ英語とイギリス英語を区別する必要はないと思います。

 それでもどうしても区別したいという場合は、どちらがより使えるかという視点ではなくどちらがより好きかという視点から選ぶことをオススメします。

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 酒井さんは、電子辞書や英英辞典について選び方を述べておられます。

 有用性よりもむしろ自らの好みを優先させることが、学習を長続きさせるためのエッセンスです。

 英英辞典には、法律辞典やビジネス用語辞典など、特定の業界の専門用語を扱っているものがあります。

 自分の仕事と直接関係のある、業界用語などに関する語彙を増やすことができるのです。

 つぶやき学習法が進んでくれば、こうした専門用語の英英辞典を利用するのもよいでしょう。

 ビジネス英語専用の辞書は、読み物としても面白いものになっています。

 日本人に馴染みのある英和辞典と、英英辞典の決定的な違いは言葉の定義の記載の有無にあります。

 英和辞典ばかり使っていると気がつかないことなのですが、英和辞典は基本的にそれぞれの英単語について日本語の訳語を対応させて載せているばかりです。

 その単語の意味そのものを定義しようとはしていません。

 これは、英和辞典の重大な弱点です。

 これに対して英英辞典は、要するに日本の国語辞典に相当するわけで、単語そのものの意味=定義が載っています。

 英語に慣れはじめればわかることですが、英語と日本語の単語というのはまったくの1対1では対応していません。

 また、英語にはあっても日本語にはない単語なども、決して珍しくはありません。

 英和辞典にその単語の持つ意味が記載されていないのは、おそらく辞書の宿命である限られた文字数にあったと思います。

 しかし、昨今では電子辞書を持たない人のほうが少ないぐらいになり、文字数制限はなくなりました。

 酒井さんは、電子辞書に個々の単語の持つ意味についての記述がなされれば、日本人の英語力向上につながると言われます。

 意味の相違を少しずつクリアしていくことが、結果として英語の回路を作ることにつながるからです。

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 酒井さんは、知っている単語をひとつ取り上げ英語で説明することを勧めておられます。

 まず、何でもよいので英語で知っている単語をひとつ取り上げます。

 慣れるまでは book や pen など、モノの名前を表す名詞を選ぶとよいでしょう。

 このとき、すでに一度つぶやきで取り上げたことのある単語は、できるだけ避けるようにしてください。

 とはいえ、意図せずに重複が起こってしまうのは、決して悪いことではありません。

 ただ、いつまでも同じ単語ばかりを繰り返し取り上げていると、語彙がなかなか増えなません。

 また、どうしてもスペルがわからないような、自分にとって難しすぎる単語も避けてください。

 ここで取り上げた単語を、今度は英語で説明します。

 この段階では、文法や語彙の正確さはまったく気にしないで、連想ゲームのような説明の仕方で構いません。

 周囲に人がいない環境であれば、できるかぎり声に出してつぶやきで説明してください。

 周囲に人がいる場合は、脳内でつぶやきます。

 このときに重要なのが、一旦つぶやき始めたら説明が苦しくともできるかぎり長くつぶやき続けることです。

 元になった単語を離れ、途中から話題が変わってしまっても問題ありません。

 むしろ、話に広がりを持たせるぐらいで丁度よいのです。

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 酒井さんは、知っている単語をひとつ取り上げ英語で説明することを勧めておられます。

 重要なのは、一旦つぶやき始めたら、説明が苦しくとも、できるかぎり長くつぶやき続けることです。

 元になった単語を離れ、途中から話題が変わってしまっても問題ありません。

 むしろ、話に広がりを持たせるぐらいで丁度よいのです。

 この学習法は、開始してしばらくすると、内容的にはつまらないことであっても、とにかく英語をつぶやき続けることができる段階に到達します。

 文法がむちゃくちゃだったりするものですが、いわゆる流暢さが得られているはずです。

 英語を流暢に話せる人というのは、要するに、とぎれることなく口から英語が出てくる人のことです。

 でたらめな英語でもしゃべりつづけることができる人の方が、正しい英語を話そうとしてとぎれとぎれに話す人より、英語ができるように見えるものです。

 ですから、このスキルを身につけると、周りからみれば、あなたはすでに英語を話せる人ということになります。

 もちろん実際には、この段階で、英会話学習は終丁とはなりません。

 しかし、とにかく流暢さを獲得すると、自分の成長が強く実感されますので、続く英会話学習のモチベーションが高まります。

 酒井さんは、意味がまったく通じない英語であっても、とにかく英語っぽくしゃべり続けられることが大切なのだと言われます。

 こうした内発的モチベーションを大切にしていくことが、英会話をモノにするために、最も重要な考え方になってきます。

 ・・・・・・

 酒井さんは、知っている単語をひとつ取り上げ英語で説明し、自分の説明と電子辞書を比べることを勧めておられます。

 英英の電子辞書で、先につぶやいた単語を調べます。

 英英辞典は、とても洗練された英文で単語を説明しています。

 長くつぶやこうと苦しんだ後に、英英辞典の鮮やかな説明に触れると、そこで使われている表現などが、鮮明な記憶として残ります。

 たとえば、bookであれば、初学者用の辞書では、

 a thing that you read or write in, that has a lot of pieces of paper joined together inside a cover

 という感じで表現されています。

 これが一歩進んだ人用の辞書だと、

 a number of printed or written sheets fastened together within a cover so that the pages can be turned freely

という具合に、より洗練された表現を用いています。

 別の出版社が出している英英辞典では、

 a set of printed pages fastened together in a cover so that you can read them

という具合に、微妙に表現が異なっています。

 苦しんでつぶやいた自分の説明と電子辞書の説明を比べると、こんなふうに説明すればよいのかといった新たな発見に気づくはずです。

 英英辞典の洗練された表現をかみしめながら、それを3回つぶやいてください。

 周囲に人がいなければ、声に出して読みましょう。

 ・・・・・・

 酒井さんは、英英辞典の説明の中に自分の知らない単語が出てきても、その意味はできる限り類推するようにしてください、と言われます。

 辞書を引いたりしていると、語彙の世界の広さにあきれ、どうしても勉強を続けるモチベーションが失せてしまうからです。

 他の学問と語学の大きな違いのひとつは、記憶を重要視するという点です。

 記憶に必要なのは繰り返しという作業であり、そんな繰り返しの作業を楽しむための工夫が大事なのです。

 そこで3回つぶやいたら、右のポケットに入っているクリップを1個取り出し、左のポケットに移動させます。

 こうしてクリップを利用して脳内での出来事を記録する方法は、プロゴルファーのメンタルートレーニングの技法として広く知られています。

 帰宅したら、そんなクリップが10個すべて左のポケットに入っていることがノルマです。

 とはいえ、あまり無理にノルマを達成しようと意気込まないようにしてください。

 そして、左のポケットに入っているクリップの数が10個なら10と、7個しかなければ7と、スケジュール帳のその日の欄に書き込んでください。

 これを約3ヵ月間も続ければ、英英辞典の説明を読むことで身につく英語も含めて、楽に目標の1000語を超えるでしょう。

 はじめの3ヵ月を超えれば、かなり自信もつくはずです。

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 酒井さんは、英英辞典の説明の中に自分の知らない単語が出てきても、その意味はできる限り類推するようにしてください、と言われます。

 これを約3ヵ月間も続ければ、英英辞典の説明を読むことで身につく英語も含めて、楽に目標の1000語を超えるでしょう。

 週末などは勉強量が落ちるかもしれませんが、1000語で満足せずにずっと学習を続けるのも、英語力を高めるのに効果があるでしょう。

 3ヵ月、1000語で終わらせることが重要なのではなくて、ずっと楽しく続けることのほうが何倍も重要です。

 理想的には3000語をめざしたいところです。

 聞き取りで何かわからない単語があっても、意味を類推できるようになるからです。

 そうなれば映画やテレビも字幕なしで、英語で楽しめるようになります。

 とはいえ、あくまでも自分のペースでやりましょう。

 とにかく止めてしまわずに、つぶやきを継続することを優先させてください。

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 酒井さんは、つぶやき学習法に使っていたのは紙の辞書だった、と言われます。

 紙の辞書にも良いところがありますが、やはり検索する力は電子辞書のほうが圧倒的に強いです。

 したがって、電子辞書を利用しない手はないでしょう。

 また、いかなる勉強を続けるときも、面倒くさいという気持ちは大敵です。

 面倒なこともしっかりやっていくべきですが、面倒くさいと感じさせるものは、極力最小限とすべきです。

 酒井さんは、そういう意味で、紙の辞書ではなくて、電子辞書や、スマートフォン・アプリケーションとしての辞書を推奨しています。

 ただ、紙の辞書にも書き込みやすいという利点があり、ここは個人の好みで選んでもよいでしょう。

 酒井さん個人としては、紙の辞書のほうが好みだということです。

 勉強が進むにつれて汚れていく辞書を見ることが、内発的なモチベーションを高めるのに役立ったからです。

 これだけ汚れるぐらい勉強したのだから、話せないわけがないという気持ちが得られるからだそうです。

 迷うような場合は、まずは電子辞書である程度の力をつけて、英会話の学習が楽しくなってきてから、紙の辞書にトライしてみるというのはどうでしょうか?

 両方を持っていても学習の邪魔にはなりませんので、迷うぐらいなら、どちらも入手してしまうのも悪い判断ではないでしょう。

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 酒井さんは、1000語マスターでプレゼンしてみようと言われます。

 英語でプレゼンをするなんて自分にはとても無理、と感じる方も多いと思います。

 ですが、3ヵ月をかけて1000語をつぶやいた後であれば、あらかじめ話す内容が決まっている英語のプレゼンはとても簡単なものになっているはずです。

 試しに、自社製品などのプレゼンで英語化されているものがあれば、それを使ってプレゼンをしてみてください。

 英語のプレゼンを聞いてくれる人が周囲にいなければ、脳内でのプレゼンでもかまいません。

 このとき、くれぐれも、英語でしゃべる内容を日本語で準備してはなりません。

 いきなりはじめてみて、うまく説明できないことは、つぶやき学習法で実施したように、苦しみながらとにかくしゃべり続けてください。

 この段階で、プレゼンしたい内容を、上手に英語で表現できる必要はありません。

 むしろ、脳に汗をかきながら、必死なプレゼンを、できるだけ長い時間実施することが重要です。

 自分でも意外なほど、英語が出てくるはずです。

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 酒井さんは、英会話をマスターするには、何よりも、アウトプットの量が重要と言われます。

 そして、くだらないと思わずに、エアー・プレゼンを楽しんでほしいそうです。

 プレゼンの本番で緊張しないためには、やはり練習=リハーサルが大切です。

 それには、プレゼンの前に、入念な準備をしておくことです

 それが、エアー・プレゼンです。

 練習を繰り返せば、プレゼンでの緊張は克服できます。

 酒井さんは、英語でのプレゼンを実施する前には、相当な時間をかけてエアー・プレゼンされます。

 最も時間をかけたのはMBAの卒業研究発表で、このために楽に1ヵ月ぐらいずっとエアー・プレゼンをしていたとのことです。

 話しやすい全体の流れを作ってから、それを一度、台本として書き起こします。

 さらに、エアー・プレゼンを繰り返しながら台本を洗練させます。

 最後は、夢の中でもプレゼンをしていたそうです。

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 酒井さんは、プラトー現象を実感しながら進もうと言われます。

 技能=スキルの習得というのは、学習の量に比例していると思われます。

 しかし学習を進めていても、現実の技能の習得に当たっては、学習する内容も方法も正しいのに、その効果が見られない状態に陥る期間ができるのが普通です。

 これを心理学では特に、プラトー現象と言います。

 プラトーとは高原や高台のことなので、そのまま日本語で”高原現象”とも呼ばれます。

 このプラトー現象というのは、どこかスランプ状態と似ているように思われます。

 しかしスランプ状態というのは、通常はすでに高いレベルにある技能者が本来の力を出せなくなるようなときのことを指します。

 これに対して、プラトー現象というのは、これから力をつけようとしている成長過程にある人、特にビギナーを抜けつつあるレベルによく見られる現象です。

 スランプとは似ていても基本的に異なるものです。

 プラトーにあるときは精神的には辛い期間にあたるものの、その後に続くさらなる飛躍の準備期間として位置づけることができます。

 ”歯を食いしばって越えるべき壁”という意味で理解するのがよいと思われます。

 何事においても、ちょっとした停滞を自らの成長限界としてしまうのは、気が早いということです。

 ・・・・・・

 酒井さんは、内容語だけを聞き取ることが大切だと言われます。

 英語では伝えられるべき言葉は必ず強調されますので、サラッと流される機能語は無視してよいということです。

 機能語が聞こえないからといって、聞き取れていないと自信をなくさなくてもよいのです。

 機能語は、そもそも、相手に正確に聞き取られることを目的として発音されてはいないのです。

 オーディオブックなどを聞くときも、ただ聞き流してしまってはダメです。

 どこが強調されている内容語なのかを意識して、内容語の意味だけを追いかけるようにすることが大切です。

 そうすれば、これまで聞き取れないと思っていた英語も、その意味だけはなんとか理解できるようになるでしょう。

 外国人と英語で会話をするようなときも、強調される内容語に意識を集中すべきなのは言うまでもありません。

 サラッと流れる機能語の意味がわからなくても構いません。

 むしろ、はじめのうちは機能語は、積極的に無視すべきです。

 逆に強調される内容語の意味がわからないときには、迷わずに意味のわからなかった単語をオウム返しするようにしてください。

 場合によって、個々の単語の発音が決して上手くない日本人の場合、機能語を省いてしまったほうが意味が通じやすいことすらあります。

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 酒井さんは、間つなぎは正しく使おう、と言われます。

 日本人は”アー”とか”エー”とかいった、英語にはない日本語の間つなぎの言葉を英会話で多用します。

 日本人にとっては英語を話すために時間稼ぎをしているに過ぎないのですが、ネイティブにとっては相当いやなことだということです。

 日本人にとっては間つなぎにすぎないまったく意味のない言葉が、ネイティブにはあたかも内容語であるかのように聞こえてしまうからです。

 相手は、大事なことなのに自分は聞き取れていないと感じるそうです。

 次に、それが間つなぎの言葉にすぎないことに気がついて、ストレスをためるという具合です。

 俗っぽくて嫌だと思っても、つぶやきの最中でも、英語らしい間つなぎの言葉を使うように心がけましょう。

 具体的には、間がもたないときは、

 You know

Well

So

Umm

I lmean

What I mean is

What's the word for

といった間つなぎ用の意味のない言葉を、小さな声ですばやく話すのです。

 厳密には、ネイティブはこうした間つなぎの言葉も文脈に応じてしっかりと使い分けているそうです。

 ・・・・・・

 酒井さんは、間つなぎは正しく使おう、と言われます。

 間つなぎ用の意味のない言葉にすら正しく気を配れることが、ネイティブにとっては知性の裏づけのようになっていることを知っておいてください。

 日本人の学習者の場合は、間つなぎは複数の種類を使うように心がけ、毎回同じ間つなぎにならないようにする程度の理解で十分です。

 また、

 酒井さんは、リズム感を鍛えることも大切だ、と言われます。

 歌が上手い人は、英語の発音も上手いと感じたことがある人は多いと思います。

 歌うときに正しい音程で歌えるセンスと、リズム感について興味深いことがわかりました。

 音程の悪い人をトレーニングで矯正することは難しいですが、リズム感であればトレーニングで十分高めることができるようです。

 英語の発音には、個々の単語の発音と英語のリズムがあることを指摘したことはあります。

 個々の単語の発音を鍛えるのは難しいという話をしましたが、これがそのまま歌のトレーニングの特性と一致しています。

 歌と英語の発音には、やはり無視できない関係がありそうです。

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 酒井さんは、英語の学習と歌との関係を述べておられます。

 歌の世界でも色々な意見があるのですが、リズム感を鍛えるためには、大きくいって次のようなポイントを押さえる必要があるそうです。

 ポイント1 リズムを常に意識すること

 ポイント2 リズムを数えること

 ポイント3 身体を動かすこと

 普段からカラオケなどで歌う機会の多い人は、日本語の歌ではなく英語の歌を選択するようにすれば、一石三鳥になりそうです。

 これらをつぶやき学習法の文脈で、さらに詳しくみていきます。

 ポイント1は、リズムを常に意識することです。

 これまでの話で、リズムの重要性を頭では理解できたと思います。

 酒井さんは、リズムの重要性を理解することと、リズムを常に意識することは違うと言われます。

 オーディオブックなどで聞き流しをするときも、つぶやき学習法で脳内でしゃべるときにも必要なことがあります。

 それは、内容語と機能語の強弱を意識し、内容語に重点を置くような癖をつけなければならないということです。

 これは、日本語の会話ではまったく鍛えられていない能力ですので、はじめのうちはかなり戸惑うと思います。

 しかし、歌でいえば、ラップのようなリズムを意識するようにするとよいようです。

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 酒井さんは、英語の学習と歌との関係を述べておられます。

 リズム感を鍛えるためには、大きくいって次のようなポイントを押さえる必要があるそうです。

 ポイント1 リズムを常に意識すること

 ポイント2 リズムを数えること

 ポイント3 身体を動かすこと

 ポイント2は、リズムを数えることです。

 音楽ではリズムのことを拍と呼び、1,2,3,4…と頭の中で数えながら楽器を弾いたり、歌ったりします。

 きちんとリズムを数えない人は、音楽の世界では伸びないと言われるぐらいで、とても重要なことです。

 酒井さんは、つぶやき学習法のレベル2でも、音のカタマリを数えるクセをつけましょうと言われます。

 たとえば、

 not at allは、

 ナラローと、ただひとつの音のカタマリとして発音します。

 これを

 ノットーアットーオールと、日本人のリズムで3つの音のカタマリとして発音するとネイティブに伝わりにくいです。

 何よりも、リズムが完全に間違っているからなのです。

 例外も多いとは思いますが、

 内容語はひとつの単語でひとつの音のカタマリを形成することが多いです。

 これに対して、機能語は複数の単語でひとつの音のカタマリを形成することが多いようです。

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 酒井さんは、英語の学習と歌との関係を述べておられます。

 リズム感を鍛えるためには、大きくいって次のようなポイントを押さえる必要があるそうです。

 ポイント1 リズムを常に意識すること

 ポイント2 リズムを数えること

 ポイント3 身体を動かすこと

 ポイント3は、身体を動かすこと、です。

 酒井さんは、リズムと身体を動かすことの間には、無視できない関係があると言われます。

 プロのミュージシャンには、音楽のリズム感を鍛えるために、踊りを習う人もいるほどです。

 英会話でもこれは同じことで、会話の最中の身振りや手振りが、リズムと深く関係しています。

 内容語が話されているときには、身振りや手振りが大きくなり、機能語のときはそれが小さくなるようです。

 電話での英会話は、面と向かっての英会話よりも格段に難しいものがあります。

 その理由は、電話では、内容語と機能語の区別を助けてくれる身振りや手振りを見ることができないからではないでしょうか。

 脳科学やロボット工学の世界には、心が身体を動かすのではなくて、むしろ動く身体のほうが心を引っ張るのではないかという考え方があります。

 心と身体は、分かちがたい関係にあることは明らかです。

 身体を動かすことが、脳から言葉を引つ張り出している面もあるのではないでしょうか。

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 酒井さんは、大統領演説のサイトから音声データをダウンロードすることを勧めておられます。

 最近は、多くのサイトが英語の演説の音声やテキストヘのリンクを無料で公開してくれています。

 英語の演説をまとめているサイトとして有名なのは、”外国語広場 アメリカ大統領演説・講演”でしょう。

 参照先: http://gaikoku.info/english/inaugural.htm

 オバマ大統領の就任演説 New! 映像・テキストなど

 オバマの勝利演説  大統領選でマケインを下し、オバマが勝利。感動的な勝利演説。

 オバマを知る本・音声ダウンロード 2008年11月7日

  2008年アメリカ大統領選挙 結果をどう読むか オバマが勝ったのなぜか 2008年11月10日

などが掲載されています。

 他にも多数のサイトがありますので、慣れてきたら色々と探してみましょう。

 実践レベル2の具体的な学習は、このサイトから適当な音声データをダウンロードし、台本を作ることから作業が始まります。

 大統領の就任演説の中から「映像」「音声」「テキスト」の3つがそろつているものをひとつだけ選んでください。

 この学習では、複数の音源ではなくて、ここで選んだひとつを繰り返して聞きます。

 サイトから、音声データとテキストデータをダウンロードします。

 そして、テキストからプリントアウトして自分用の台本を作ります。

 音声だけでテキストのない演説は、くれぐれも選ばないようにしてください。

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 一度選んでみて内容があまり好きになれない演説は、さっさとやめてもっと自分として共感できる演説を選ぶように心がけましょう。

 演説の内容への共感があってはじめて、自分の内側から英語でつぶやく楽しみが得られるからです。

 いずれはそれが血肉となり、英語でプレゼンをする機会を得た時に演説のフレーズが口をついて出てくるような経験に必ずつながります。

 酒井さんは、オバマ大統領の就任演説や大統領選の勝利演説が大好きで、その演説を身振りまでコピーしているそうです。

 酔って家路につくときについついこの演説が口から出てしまい、周囲の人に怪しまれたりもするとのことです。

 これらの演説は人気が高く、外国語広場でも多くの情報が得られる状態になっています。

 特にこれというものがないときにはぜひトライしてみてください。

 本当に、ゾクゾクする名演説です。

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 酒井さんは、台本の内容語に丸をつけ音声を聞くことを勧めておられます。

 演説の特徴は、普通の会話よりも内容語と機能語を極端に使い分けることにあります。

 演説というのは、語彙レベルの異なる多数の聴衆に向けて行うため、使用される語彙は比較的簡単なものから選ばれます。

 そして、訴えたい重要なポイントは繰り返し述べられます。

 英会話のリズム感を鍛えるための素材として、演説は非常に優れています。

 政治家などの演説に学べば、プレゼンテーション能力まで高まるのですから、色々な意味でオトクです。

 まずは、音声を聞いてしまう前に台本を読みます。

 英文の意味がよくわからなくても構いませんので、なんとなく内容語だなと感じる単語に丸をつけてみてください。

 それから、台本を見ながらスマートフォンやMP3プレーヤーなどで演説を聴きます。

 そのときに、自分の内容語の予測が意外と外れていないことを確認してください。

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 酒井さんは、映像を見て台本を手につぶやくことを勧めておられます。

 映像でいかに身振り手振りが内容語を伝えるために重要な役割を果たしているかを、実際に感じてほしいそうです。

 日本語の会話では、内容語と機能語を音声ではほとんど区別しません。

 ですから、身振り手振りも自然と少なくなります。

 しかし、日本人はまず、英語をしゃべる人はこれほどまでに動くのかということを実感する必要があります。

 とはいえ、もちろん個人差はあります。

 つぶやきでは、内容語に丸のついた台本を手に、丸の部分を強調するようにつぶやいてみてください。

 朝夕の通勤時間は、プレーヤーなどで演説を聞きながら、とにかく、リズムに注意して、脳内でつぶやいてください。

 さらに、職場での浪費や空費の時間には、演説の内容語に注意してつぶやきます。

 個々の単語の意味がわからなくても、個々の単語の発音が正確でなくとも構いません。

 とにかく、内容語への意識を高めます。

 このとき、映像で見たような身振り手振りを真似て、意識して大げさにやるようにしてください。

 実際に動かしたほうが効果的ですので、できる限り周囲に人がいないときに、小振りでも、動きながらつぶやくことを実践するようにしてください。

 動きながらつぶやいたほうが、演説のフレーズが記憶に残りやすいということを確認するようにしてください。

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 酒井さんは、映像を見て台本を手につぶやくとき、動きながらつぶやくことを勧めておられます。

 体の動きが演説のフレーズと結びついて、動きながら口から英語がスムーズに出てくる体験をするのはとても大切とのことです。

 日本にも手が覚えているという表現があります。

 ただし、体に記憶が宿るという考え方は専門的には賛否両論あり、まだまだあやしい仮説にすぎません。

 しかし、近年のいわゆる臓器移植において、移植された患者に臓器提供者の好みや性格が転移しているかのような事例が報告されているそうです。

 こうした事例から、人間は、記憶を、脳の中だけでなく体にも蓄えているかもしれないと信じている人も少なからずいるようです。

 記憶を体にも覚えさせてみることを、試してみてはいかがでしょうか。

 そこで、ひとつの演説を1週間つぶやいてみることお勧めします。

 そして、次のレベルでは何度も繰り返すことが重要です。

 意味がわからないままでも問題ありませんので、とにかくつぶやきを繰り返してください。

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 酒井さんは、何度も繰り返すことが重要だと言われます。

 意味がわからないままでも問題ありませんので、とにかくつぶやきを繰り返します。

 そして、何度も耳にするのに意味のわからない単語を、知りたいという欲求、つまり内発的なモチベーションが湧き上がってくるのを待つのです。

 本当に知りたくなったら、レベル1で使った英英辞典でその単語の意味を理解し、言葉の意味が理解できる喜びを味わってください。

 このとき、英英辞典ではなく和英辞典を使ってしまわないように、できれば我慢をしてください。

 どこかの誰かがまとめた頻出英単語集の暗記に多くの人が失敗するのは、そこにあるのが知りたいという欲求ではないからです。

 頻出単語ぐらい知っておかないとという義務感は、頻出という単語が読者の危機感を煽っています。

 酒井さんは、頻出英単語や頻出英文といったものは、たくさん購入しては失敗してきたと言われます。

 ただそうした中にも、個人的に1冊だけ推薦しておきたい本があるそうです。

 それは、駿台文庫の”新・基本英文700選”とのことです。

 参照先: https://www.amazon.co.jp/%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E8%8B%B1%E6%96%87700%E9%81%B8
-%E9%88%B4%E6%9C%A8-%E9%95%B7%E5%8D%81/dp/4880761974/lleigo-22/


 英文和訳と和文英訳の基本となる英文700を厳選しました。

 英文は文法・構文の秩序を重視し、理解しやすく、覚えやすく配列してあります。

 重要な構文と文法事項は太字に、記憶すべき慣用語句はイタリック体にしました。

 commentに熟語や慣用句の意味/参照事項/解説をまとめました。

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 酒井さんは、イメージトレーニングによるつぶやきを勧めておられます。

 スポーツ心理学の理論によると、イメージトレーニングによる学習の効果は実際の経験に基づく学習効果と比較して3割程度の強度になるそうです。

 酒井さんは、イメージトレーニングには大統領就任演説が良いとのことです。

 大統領就任演説に比べれば通常の会話ぐらい恥ずかしくない、という自信が生まれることもねらっています。

 まず、大統領就任演説を完璧に記憶しましょう。

 次に、自分がアメリカの大統領になって、大勢の人の前で就任演説をしているイメージを、できる限りリアルに持ってつぶやきを行うようにします。

 あなたは控え室にいて、緊張で、足はガクガグ、手はブルブルと震えます。

 ボディーガードが控え室の扉を無言で開けます。

 扉が開くと、遠くに聞こえていた歓声が、とても近くに聞こえます。

 さっきまでワーワーとしか聞こえなかった歓声は、連呼されるあなたの名前であることに気づきます。

 大勢の人が、あなたの名前を叫び、拍手をしています。

 ボディーガードがあなたを誘導し、黒い厚手のカーテンをめくります。

 まぶしさに目をくらませつつ、歓声と拍手がさらに大きくなったことに気がつきます。

 見たこともないぐらい大勢の人が、一斉にあなたの顔を見ます。

 あなたは、不思議と落ち着きを取り戻し、演台に向かいます。

 演台に近づくにつれてさらに大きくなる拍手、薄い皿の割れるような歓声が聞こえます。

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 酒井さんは、ノンネイティブとの会食を勧めておられます。

 ネイティブとの会話では、先方から始終単語や発音を直されたり、意味が通じないことに先方がイライラしたりします。

 こうした環境では、英語を勉強している人は、英語にますます自信がなくなります。

 また、もっと英語の勉強をしなければならないという、外発的モチベーションばかりが刺激されてしまいます。

 これに対して、ノンネイティブにとっては、母国語でない言語を話すことは相当なストレスです。

 英語が母国語でないノンネイティブ同士であれば、このストレスをお互いに理解しています。

 なので、単語や発音の間違いなどにも気にせず、会話を進めことができます。

 日本には多くの外国人がいますし、その数は年々増えています。

 職場の同僚や取引先に、外国人がいる方も多いでしょう。

 そんな外国人の中でも、特に英語を母国語としないノンネイティブの人たちと接触し、英語でコミュニケーションをとる機会を意識してつくります。

 できれば、そうしたノンネイティブの方々と会食をするのがベストです。

 ノンネイティブとの会話では、自分の英語が通じていることへの喜びが得られ、それが内発的なモチベーションになります。

 ノンネイティブに声をかけるときは、先方に失礼にならないようにしましょう。

 英会話の学習のために日本語ではなくて英語で会話をしたいということを、あらかじめ先方に伝えておくのです。

 はじめは声をかけるのに勇気がいりますが、実際にはじめてみればお互いに学びの多い、すばらしい体験になるはずです。

 酒井さんの場合、こうしてお声がけしたノンネイティブたちが、今でもビジネスの人脈になっているそうです。

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 酒井さんは、英語の商談をめざす実践レベル3について、なぜ?を繰り返し原因を明らかにすることが大切とのことです。

 実践レベル3では、普段の仕事の時間までをも英会話の習得に利用してしまいます。

 慣れるまでは仕事の効率が悪化してしまうこともあるでしょうが、英語でビジネスを考えると新しい発想が生まれたりもします。

 なので、むしろ一石二鳥という側面もあります。

 酒井さんが一時的に日本を離れる決意をしたのは、本来は消費の時間となる普段の仕事の時間をすべて英語に変えてしまうことでした。

 それができれば、この消費の時間を投資の時間にそっくり変えることができると考えたからです。

 ちょうど、マラソン選手が空気の薄い山岳地帯でトレーニングをすることで、平地でのマラソンの能力を飛躍的に高めることに似ています。

 毎日、日本語ではなくて英語で仕事をするということは、自らに英語の負荷をかけ続けることです。

 英語の能力のみならず、通常の仕事力までをも高めてしまおうという欲張りな成長戦略です。

 もちろん、緊急の仕事であったり、とてもそうした余裕がないときには日本語で仕事するようにすべきです。

 しかし、少しでも隙があれば英語でビジネスの問題を考え、その原因を突き止め、解決策を練ります。

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 酒井さんは、問題に出会ったときは”なぜ?”という質問をしつこく繰り返し、問題の根本的な原因を探ることが重要だと言われます。

 誰でも、何か問題を見つければ、その問題がなぜ起こったのかを考えます。

 しかし一度や二度、問題の原因をと考えたぐらいでは、よくても問題の一時的な解決にしかなりません。

 たとえば、A県で山火事が発生したとします。

 なぜ、山火事が起こったの?why?
 最近は、空気が乾燥していたから。because
 なぜ、空気が乾燥していたの?why?
 最近、雨が少なかったから。because

 ここで問いを止めてしまうと、山火事はきっと再発することになります。

 ですから、さらに”なぜ?”という問いを繰り返し、問題の原因に迫っていく必要があります。

 隣のB県で、山火事が起こらなかったのは、なぜ why?
 なぜ、A県では、同じような対策をとらないの?why?
 なぜ観光客に、火の取り扱いに関する教育をしないの?why?

 ここまで問いかければ、A県における山火事問題のひとつの原因は、大人数である観光客の教育が難しいことにあることがわかります。

 具体的な原因が特定できれば、対策はいくらでもありそうです。

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 酒井さんは、問題に出会ったときは”なぜ?”という質問をしつこく繰り返し、問題の根本的な原因を探ることが重要だと言われます。

 具体的な原因が特定できれば、対策はいくらでもありそうです。

 問題に出会ったときは”なぜ?”という質問をしつこく繰り返し、問題の根本的な原因を探ることが重要になります。

 不況時にあっても、確実に売りしげ、利益を仲ばし続けるトヨタ自動車の強さを否定する人は少ないでしょう。

 そんなトヨタ自動車の強さの秘蜜は、現場社員による”改善”にあるといわれています。

 研究者たちは、普通の意味での改善と、企業文化としてシステマティックに定着した改善の意味を分けて考えています。

 研究の文脈で使われる”改善”のことを、特に”Kaizen”と、そのまま英語で呼ぶようになりました。

 今となっては、欧米のビジネス・スクールで”Kaizen”という英単語を学生に教えないところはないほどになっています。

 ”Kaizen”にとって重要なのは、現場社員の人々の”なぜなぜ5回”にあると言われます。

 ”なぜなぜ5回”とは、現場社員の人々がどこまでも問題の原因を追究していくときの態度を示しています。

 つぶやき学習法実践レベル3では、この”なぜなぜ5回”を普段から日本語と英語で行うことで、ビジネス思考力を高めることをめざします。

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 酒井さんは、問題に出会ったときは”なぜ?”という質問をしつこく繰り返し、問題の根本的な原因を探ることが重要だと言われます。

 つぶやき学習法実践レベル3では、”なぜなぜ5回”を普段から日本語と英語で行うことで、ビジネス思考力を高めることをめざします。

 レベル3では、読者が問題の原因を

「なぜ?」

と日本語で考えるときと、

Why?

と英語で考えるときで、考える筋道はもちろん、ときには答えまでもが変わってきます。

 ”なぜなぜ5回”といっても、そもそも解決すべき問題というものを見つけることは、それ自体が言うほど簡単なことではなかったりします。

 そこで、実践レベル3のつぶやきでは、仕事上の問題がどうしても見つかりにくいときに、日常のちょっとしたネガティブなつぶやきを利用します。

 よく使うネガティブな日本語を5つ見つけるようにします。

 それは、多くの人が日本語でつぶやきを言うときに使っている表現です。

 自分が最も頻繁に使うネガティブなつぶやきを、今日から英語に変えてしまいます。

 そして、そのネガティブな日本語の使用は封印してしまいます。

 究極的には、自分が実際に使う日本語の表現を、すべて英語に変えてしまうことがつぶやき勉強法の完成形です。

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 酒井さんは、問題に出会ったときは”なぜ?”という質問をしつこく繰り返し、問題の根本的な原因を探ることが重要だと言われます。

 究極的には、自分が実際に使う日本語の表現を、すべて英語に変えてしまうことがつぶやき勉強法の完成形です。

 仕事でも、プライベートでも、こうしたネガティブな表現を使うような場面に出くわしたら、こうした言葉を発した次の瞬間に、自分で

 Why?

と問いかけます。

 それに対して、あなたは

 because

と答えていくのです。

 これを繰り返し、自分に何度も問いかけていきます。

 やめたくなる気持ちに負けないで、できる限り深く、深く、ネガティブな言葉を発することになった原因を説明していきます。

 最後に、原因が特定されたら

 Let's fix it.(それを解決しよう)

で締めくくりです。

 この学習法によって、ネガティブな発想をネガティブなままにしておかないという態度を身につけることもできます。

 ・・・・・・

 酒井さんは、自己主張というのは基本的に他人の意見に対してネガティブに反応することから始まると言われます。

 そして、他人の意見にネガティブに反応すると、英語をしゃべらないといけない状態に自分を追い込むことになります。

 これが、結果として英語力を鍛えることにつながるのです。

 実際に英語を事実上の公用語とする国際社会では、安易にyesに逃げず、Noと、どんどん自己主張していく必要があります。

 はじめの第一声をネガティブなものにするということは、自己主張をしていく覚悟を決めることでもあるのです。

 というわけで、まず、自分がよく使う日本語のつぶやき=ネガティブなものを5つ把握します。

 5つという数にこだわるのは、それ以上になると、一度に覚えきれないからです。

 慣れてきたら、もちろんこれを10個、20個と増やしていってください。

 5つ見つけたら、それに対応する英語を和英辞典で調べます。

 ここで注意したいのは、和英辞典で対応する英単語は、ひとつではなくて複数あることが多いということです。

 この段階では、まずは、自分にとってもっとも覚えやすいものを選んでしまってよいのです。

 現実には、こうした複数の異なる単語には、それぞれニュアンスの違いがあります。

 慣れてきたら、適切な単語を考えるようにしましょう。

 ・・・・・・

 酒井さんは、はじめの第一声をネガティブなものにするのは、自己主張をしていく覚悟を決めることでもあると言われます。

 自己主張というのは、基本的に他人の意見に対してネガティブに反応することから始まるからです。

 他人の意見にネガティブに反応すると、英語をしゃべらないといけない状態に自分を追い込むことになります。

 そこで、自分がよく使う日本語のつぶやき=ネガティブなものを5つ把握します。

 次に、選び出した5つのつぶやきの表現を、実践レペル1で行ったのと同様に、英語で定義します。

 正確にできなくとも構いません、正確に定義することよりも、長く英語をつぶやきで話すことを心がけてください。

 表現の正確さを思うあまり、黙っている時間を長く取ってはいけません。

 とにかく、不正確でも構わないのでつぶやきの量を重視するのが、この学習法の特徴です。

 それから、それぞれの定義を英英辞典で確認し、それを何度も繰り返しつぶやきで言います。

 英英辞典の見事な定義に感心しながら、5つの表現を身体にしみこませてください。

 それぞれの表現を、100回ぐらいずつつぶやきで繰り返せば、それなりにしっくりくるようになるでしょう。

 慣れないうちは、ついっい日本語で言いなれたつぶやきを、日本語で発してしまうかもしれません。

 それを、徐々に、5つの英語表現に変えていきます。

 つぶやきが自然に英語になるまでは、つぶやきはじめてから1ヵ月ぐらい後になります。

 5つのつぶやきは、プリントアウトして、ディスプレイの横に貼り付けておいたりすることをお勧めします。

 この項はこれで終わりです。

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